研修の成否は8割講師との打ち合わせで決まる|担当者が準備する9項目

目次

研修がうまくいくかは、打ち合わせで決まる

研修がうまくいかなかったとき、講師のスキルや受講者の姿勢に原因があると思われがちです。
しかし実際には、その前段階である「打ち合わせ」に問題が隠れていることがあります。

現場の状況が講師に伝わっていない。
研修後に何を変えたいのかを共有できていない。
当日の進め方が曖昧なまま始まっている。

こうした状態のまま研修をしても、ただ「いい話だった」で終わってしまうことが少なくありません。

研修の成否は、打ち合わせだけで決まるわけではありません。

目的の設定、上司の関与、研修後のフォローなど、要因はいくつもあります。
ただ、そのなかでも打ち合わせは、研修担当者が自分の手で改善できる数少ないポイントです。

この記事では、研修担当者が講師との打ち合わせでやるべきことを時系列で整理します。

初めて研修を担当する方でも、失敗しにくい形でまとめました。

まずは、私自身が「事前の共有を怠って提案がズレた」という体験からお話しします。

研修の打ち合わせとまったく同じ構造の失敗なので、ここから始めさせてください。


私が催事販売でやってしまった、事前共有の失敗

以前、私が勤めていた会社では営業職として、BtoBだけではなく、全国の商業施設でウォーターサーバーの催事販売をしていた時期があります。

ある日、興味を示してくれたご夫婦に話を聞くと、以前使っていたサーバーは、ボトル交換が重くて解約したとのことでした。

奥様は腰を痛めた経験があり、料金よりも「無理なく交換できるか」を気にしていました。

しかし、私はその不安にうまく答えられず、経験豊富な上司に途中からヘルプに入ってもらいました。

その際、私が伝えたのは、

以前にもウォーターサーバーを使っていて、契約を迷っているお客様です。

ということだけでした。

腰に不安があることや、ボトルの重さが解約理由だったことは伝えませんでした。
上司なら、会話の中で聞き出してくれるだろうと思ったからです。

上司は、料金の安さや便利さを中心に説明しました。

すると奥様が尋ねました。

ボトルは、自分で上まで持ち上げるんですよね?

上司はこう答えました。

最初は少し重く感じますが、慣れれば皆さん交換されていますよ

その瞬間、奥様の表情が曇りました。

私は慌てて、腰を痛めた経験や、以前のサーバーをボトル交換の負担で解約したことを補足しました。
しかし、すでに提案の方向はズレていました。

最終的に、ご夫婦は「もう少し考えます」と言って帰ってしまいました。

商談後、上司から言われました。

それなら、卓上型やボトルを下に置くタイプを中心に説明した方がよかったね。
ひとことでいいから、先に教えてほしかったな。

このとき私は、提案がズレた原因は上司の説明力ではなく、私の引き継ぎにあったと気づきました。

たったひとこと「料金よりも、ボトル交換の負担を心配しています。」伝えていれば、説明の順番も、紹介する機種も変わっていたはずです。

そして、これと同じことが、研修の打ち合わせでも起こります。


なぜ講師との打ち合わせが重要なのか

さきほどの失敗で、上司の説明力が低かったわけではありません。

上司は私から渡された少ない情報で、平均的なお客様を思い浮かべて話しただけです。
悪いのは、ひとことの引き継ぎを怠った私の方でした。

これと同じことが、外部講師との間でも起こります。

外部講師は、研修のプロではありますが、あなたの会社のプロではありません。

  • 社内の雰囲気
  • 受講者のレベル差
  • 現場で起きているリアルな問題
  • 上司が何を期待しているか

こうしたことを、講師は知らないまま研修に臨みます。

情報がないまま話せば、講師の話は「報連相が大事です」「意識を高めましょう」といった、誰にでも当てはまる内容が中心になりがちです。

内容は正しくても、受講者は「自分たちは何をどう変えればいいのか」が見えず、現場に活かしにくい研修になってしまいます。

あのとき、料金の話は正しくてもご夫婦の役には立たなかったのと同じです。

つまり、研修担当者の役割は「現場の翻訳者」になることです。

現場で起きていることを、講師が理解できる形に整理して伝える。

この役割を果たせるかどうかで、研修の質は大きく変わります。

ここからは、講師との打ち合わせを「前・中・後」の3つの段階に分けて、それぞれで何をすべきかを見ていきましょう。


打ち合わせの「前」|社内で準備しておくこと

いきなり講師と話し始めるのは、おすすめしません。

あのとき私が、上司に何を伝えるか整理しないまま引き継いでしまったのと、同じ失敗が起きるからです。

まずは、研修担当者側だけで、次の3点を整理しておきます。
ここは講師を交えず、社内で固める作業です。


現場で何が起きているか(背景)

たとえば、

  • 新人のミスが減らない
  • クレーム対応にばらつきがある
  • 管理職の指示が現場に伝わっていない

といったことです。

ここでは「困っていること」を、そのまま具体的な言葉にしておきます。

「意識の向上」などの抽象的な表現にする必要はありません。

あのとき私が上司に渡せなかったのが、まさにこの背景の部分でした。

「お客様は腰に不安があって、ボトル交換を心配している」という一番大事な背景を、共有できていなかったのです。


研修後、何ができるようになってほしいか(期待する行動)

ここは、行動レベルで書くのがポイントです。

「意識を高めたい」「理解を深めたい」といった表現は、ゴールになりません。

「クレーム対応の初動を統一できる」「報告のタイミングが揃う」というように、研修後の行動で書いておきます。


受講者は誰か(受講者情報)

  • 新人か、ベテランか
  • 現場経験はどれくらいか
  • 研修に前向きか、消極的か

ここを整理しておかないと、講師は「平均的な受講者」を想定してしまいます。

私の上司が、平均的なお客様を思い浮かべて話したのと同じことが起こります。


打ち合わせの「中」|講師と決めること

社内での準備ができたら、いよいよ講師との打ち合わせです。
ここでは、準備した内容を講師に伝えたうえで、講師と一緒に「研修の中身」を決めていきます。

決めるべきことは、次の4つです。


研修内容

準備しておいた背景と期待する行動を、講師に伝えます。

どんなことで困っているか、研修後に受講者にどう変わってほしいか。

ここを丁寧に共有することで、講師は「何を重視すべき研修か」を理解できます。

伝えるゴールが変われば、研修の中身も変わります。


研修形式

研修形式は、受講者のレベルや人数に応じて調整します。

講義中心にするか、ワークを多めにするか、ロールプレイを入れるか。

ここでは「お任せします」ではなく、現場目線の希望を伝えることが大切です。


当日の流れと役割分担

研修当日は、想定どおりに進まないことがほとんどです。

そのため、「何か起きたとき、誰が判断するのか」を事前に決めておきます。

  • 研修担当者はどこまで関与するか
  • 質問対応は誰がするか
  • 時間が押した場合は何を削るか

ここを決めておくと、当日は迷わず対応できます。


研修後の確認方法

ここは見落とされがちですが、「研修後、誰が・いつ・何を確認するか」も、この打ち合わせの段階で決めておきます。

研修は、やって終わりではありません。

研修直後に内容を理解できたか、1週間後に現場で試したか、1か月後も行動が続いているか。

どの時点で、誰が確認するのかを決めておくと、研修後の振り返りが「なんとなくの感想」で終わらずに済みます。


打ち合わせの「後」|決めたことを文章に残す

打ち合わせで決めたことは、簡単でいいので文章に残しておきましょう。

口頭で合意しただけでは、時間が経つと「何を目指した研修だったのか」が曖昧になっていきます。

残しておくのは、次のような内容です。

合意した研修の狙いとゴール、当日の流れと判断ルール、そして「誰が・いつ・何を確認するか」という研修後の確認の約束です。

記録があると、研修後に、ゴールは達成できたか、どこがうまくいったか、次に改善すべき点は何かを、感情ではなく事実ベースで整理できます。

この整理は、次の研修にもそのまま活きてきます。

面倒に感じても、必ず文章に残しておきましょう。


打ち合わせでよくある失敗と防ぎ方

ここまでで、打ち合わせの流れは整理できました。

ただ、頭ではわかっていても実際の打ち合わせではうまくできないことも多くあります。

つまずきやすい失敗を、2つに絞ってお伝えします。


失敗①|「いい研修をお願いします」で終わる

これは、本当によくあります。
相手を信頼しているつもりで、実際には丸投げしている状態です。

思い返せば、私が上司に「以前使っていて、迷っているお客様です」とだけ伝えたのも、これに近い状態でした。

困っている具体例を1つでも伝える。

それだけで、講師の話は「自分たち向け」に近づきます。


失敗②|ゴールが曖昧なまま進む

「意識づけ」「理解促進」をゴールにしてしまうと、研修後に成果を確認できません。

何をどう変えればよいのかが、誰にも見えないからです。

防ぎ方は、ゴールを行動で言語化しておくこと。

「研修が終わったあと、受講者は何をできるようになるのか」を、一文で言えるようにしておくことです。


そのまま使える|講師との打ち合わせチェックリスト

ここまでの内容を、実際の打ち合わせでそのまま使えるように、チェックリストにまとめました。

打ち合わせの前に、このリストを埋めてから講師と話すと、伝え漏れを防げます。

  • 今回の研修を行う背景は何か
  • 現場では具体的に何が起きているか
  • 受講者は誰か(経験や理解度はどの程度か)
  • 研修後、何ができるようになれば成功か
  • 講義・ワーク・ロールプレイをどう組み合わせるか
  • 当日の進行役は誰か
  • 時間が押した場合、何を削るか
  • 質問対応は誰が行うか
  • 研修後、誰が・いつ・何を確認するか

リストだけでは埋めにくいので、記入例も載せておきます。

自社の状況に置き換えて使ってください。

項目記入例
現場の課題新人から上司への報告が遅れ、クレーム対応が後手に回っている
研修後の行動問題発生から10分以内に、決められた項目を上司へ報告できる
受講者入社1年未満の社員15名
研修形式講義30分、事例検討30分、ロールプレイ30分
成果確認研修1週間後に、上司が報告行動を確認する

このリストが埋まっていれば、講師に「いい研修をお願いします」と丸投げすることは、まずなくなります。


補足|打ち合わせで決めた重要事項を、研修後のフォローにも使う

打ち合わせで決めたことは、当日の研修だけで役目を終えるわけではありません。

研修後のフォローにも、そのまま活かせます。

打ち合わせで出た「特に身につけてほしい行動」や「注意点」は、次のような形で研修後に残すと、定着しやすくなります。

  • 重要な行動を、チェックシートにする
  • 上司向けの確認項目にする
  • 短いフォロー動画にする

文章だけでは伝わりにくい内容ほど、動画のような形との相性は良いです。

打ち合わせの記録を、研修後のフォローの材料としても使う。

そう考えておくと、打ち合わせの時間そのものがより価値のあるものになります。


まとめ|講師との打ち合わせは「研修の設計図」

研修担当者の仕事は、研修当日だけではありません。事前に整理し、講師とすり合わせ、当日を支え、研修後につなげる。この一連の流れ全体が仕事です。

あのご夫婦との商談で私がつまずいたのは、当日の説明ではなく、その前の、ひとことの引き継ぎでした。

研修も同じです。

講師との打ち合わせは、研修の設計図づくりそのものです。

設計図がしっかりしていれば、講師の話と現場の課題がつながり、研修を実際の行動へ結びつけやすくなります。


「先に教えてほしかった」を、なくすために

私が催事販売で学んだのは、たったひとことの共有が、結果を大きく左右するということでした。
そして、これは研修の打ち合わせでも、まったく同じように起こります。

ただ、その「ひとこと」を自分だけで見つけるのは、案外むずかしいものです。

現場では当たり前になっていることほど、言葉にして講師へ渡すのが難しいからです。

テンツキは、研修の設計を「現場で動ける形」にすることを専門にしています。

あなたの現場で起きていることを一緒に整理し、講師にどう伝えれば研修がズレないか、その設計からお手伝いします。

研修の打ち合わせを控えている方も、これから研修を企画する方も、まずは今の状況を聞かせてください。
30分の無料相談を承っています。

形式
オンライン

所要時間
30分

費用
無料

まだ具体的に決まっていなくても構いません。「うちの場合はどうだろう」から、ご相談ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

中小企業の研修設計・研修動画制作を専門としています。
研修担当者の「何を教えればいいかわからない」という悩みから一緒に整理し、現場で使える研修づくりをサポートしています。

コメント

コメントする

目次