OJTのやり方完全ガイド|新人を最速で育てる現場の教え方
- 結論|OJTを「教える技術」ではなく「迷わない状態づくり」に変えると、新人が伸びやすい
- 違和感|「OJTお願いします」が、現場では“丸投げ”に聞こえる瞬間がある
- まずは確認|OJTが崩れる原因は「人」より「状態」にある
- 「最速で育てる」ではなく「最速で迷いを減らす」を目指す
- 改善策の入口|いきなり直さない。まず「見える化」と「線引き」から始めてみる
- 現場で使えるOJTテンプレ|研修担当者が持てる“整理シート”を作る
- よくある正論|「新人が自分で考えないと」は正しい。でも現場では効かない理由がある
- OJTを回すコツ|研修担当者が「現場の通訳」になる
- まとめ|OJTは“教え方”より“迷いを減らす整理”で回りはじめる
- 研修内容を一度、整理してみませんか?
結論|OJTを「教える技術」ではなく「迷わない状態づくり」に変えると、新人が伸びやすい
最初に一番伝えたいことだけ言うと、
OJTがうまくいかない職場でよく起きているのは、
教え方の上手い下手よりも、現場が迷う状態が放置されていることです。
「正しい教え方をやろう」と頑張るほど、
逆に現場がしんどくなる場面があります。
だから、この記事では
正解を押しつけるのではなく、
こう考えると整理しやすい
という距離感でまとめています。
OJTは「仕事を通じて必要な知識・技能・態度を教える」やり方です。
ただ、OJTは職場の条件や仕事の中身でやり方が変わる前提で、一様に決められないものです。
この記事では、研修担当者と現場が「人を責めずに」整理できるように、OJTを状態・構造の話として組み立ててみました。
この記事を最後まで読むことで、
次が言葉になります。
- 研修担当者が感じている「なんか変だな」が、どの状態なのか分かる
- 原因を新人・ベテランの性格に置かずに、打ち手が出せる
- 「最速で育てる」を、根性ではなく設計で近づける
- 明日から直すのではなく、まず整理して、現場が動ける順番が見える
この中で一つでも気になる部分があれば是非最後まで読んでみてください!
違和感|「OJTお願いします」が、現場では“丸投げ”に聞こえる瞬間がある

研修担当者が
OJTお願いします!
と言ったのに、なぜか空気が重くなる。
よくあるのが、このパターンです。
たとえば現場では、こんな会話が起きます。
研修担当者:
「新人のOJT、現場でお願いできますか?」
現場リーダー:
「もちろん…(でも、何をどこまで?)」
ベテラン:
「前も教えたけど、結局できるようにならなかったよね」
新人:
「聞くタイミングが分からなくて…」
この状況は誰も悪くないのに、
全員が少しずつ困る状態。
- 現場は忙しい
- 新人は遠慮
- ベテランは疲れる
結果、研修担当者は板挟みになります。
ここで大事なのは、「誰が悪いか」を探すことではなく、何が起きている状態なのかを言葉にすることです。
まずは確認|OJTが崩れる原因は「人」より「状態」にある

「新人が伸びない」と感じる前に、
実際には―
- 一人で任せられる仕事が増えない
- 判断を毎回止めて確認する状態が続く
という場面が起きていることが多いです。
そして、その背景にあるのが、
教える側が「どこまで任せていいか」を迷っている状態
です。
ここで一度、研修担当者の視点で整理してみましょう。
OJTがうまく回らないとき、
会話の流れとして、
こんな言葉が出てきやすくなります。
- 新人が主体性ない
- ベテランが教える気がない
実際、そう感じてしまう場面もあります。
ただ、原因を性格ややる気に置いた瞬間、
「じゃあ何をどう変えるか」が見えなくなります。
一方で、
原因を「状態」や「構造」に置き直すと、
- どこまで任せていいかを整理する
- 教える内容の優先順位を決める
- 合格ラインを言葉にする
といった、
研修担当者が現場と一緒に整理できるテーマに変わってきます。
原因の正体①|「何を教えるか」が人によって違う
新人が混乱するときは、
だいたい「正解が複数ある状態」。
つまり、同じ作業に対して言い方がバラバラな状態です。
- A先輩:「最初に全体を見てから触って」
- B先輩:「まず触って覚えたほうが早い」
- C先輩:「そのやり方は前に怒られたからやめて」
この状態では新人は
「どれが正しいか」を当てるゲームに入ります。
そして、これが続くと、
新人はミスを避けるために動かなくなります。
ここでの問題は、
ベテランの教え方ではありません。
“教える範囲”と“合格ライン”が共有されていない状態が問題なんです。
原因の正体②|「どこまで任せていいか」が曖昧
新人が作業を進めていて、
このまま進めていいのかな?
と迷っている様子を見た瞬間。
- そこは一回止めよう
- それは先に聞いてからにして
と声をかけてしまう。
すると新人は
判断は自分でしないほうがいい
と学んでしまいます。
そして、この学びの背景にあるのが、
教える側が「どこまで任せていいか」を決めきれない状態になっていることです。
- 新人が「一人でやっていい作業」と「確認が必要な作業」の境界
- ミスが起きたときの責任の置き方(新人?教えた人?現場?)
- 教える時間を取っていいのか(忙しさの中での優先順位)
現場では、このように線引きが曖昧なまま進んでしまいます。
そして、線引きが見えないと、
教える側は安全側に寄ります。
例えば―
ベテランは:
「結局、自分でやったほうが早い」と感じやすくなり、
新人は:
「聞くのが怖い」と感じやすくなります。
結果、その様子を見て、
研修担当者には
「現場が協力してくれていない」ように映ります。
でも実際には、
誰かの姿勢の問題というより、
線引きが共有されていないだけ、ということが多いんです。
原因の正体③|教える側の負担が“見えていない”
OJTは新人のための仕組みなのに、実際には教える側の消耗戦になる
ということがあります。
OJTが企業で重視されやすい一方で 、
現場で起きがちなのは、
- 教える時間が「仕事に上乗せ」される
- 教えているのに成果が見えない
- 研修担当者に状況が共有されない
- 失敗が起きると教えた側が責められる空気
こうなると、教える側は守りに入ってしまいます。
結果、新人の成長が止まってしまう。
ここまでが「原因」です。
では、ここから先は考え方を一度切り替えてみましょう!
「最速で育てる」ではなく「最速で迷いを減らす」を目指す

新人の成長スピードは、
教える熱量より「迷いの少なさ」で決まることがあります。
たとえば、
- どこまで一人でやっていいのか
- どこから確認が必要なのか
が最初から分かっていると、
新人は立ち止まらずに動けます。
一方で、
毎回「これでいいですか?」と判断を止めなければならない状態だと、
どれだけ丁寧に教えても、経験が積み上がりにくくなってしまいます。
ここまで見てきたように、
新人が止まらずに経験を積めるかどうかは、
「どれだけ教えたか」より、「どれだけ迷わずに動けたか」
に左右されます。。
正直、「最速で育てる」というのは魅力的です。
しかし詰め込みになると、
「どこまで自分で決めていいか」が見えないまま覚えることになり、
新人は自分で判断せず上司に確認しほうが安全だと学んでしまいます。
そして教える側も、
「これだけ教えたのに」と疲れていきます。
つまり、
ここで目指したいのは、
教える量を増やすことではありません。
考え方を少しだけ切り替えて、
「最速で育てる」ではなく、「最速で迷いを減らす」
ことを目指します。
迷いが減れば新人は動けます。
そして、動けると、経験が増え結果として育ちます。
改善策の入口|いきなり直さない。まず「見える化」と「線引き」から始めてみる

OJTの改善は、熱い研修を増やすより、現場の“モヤモヤ”を紙に出すほうが進みます。
ベテランごとの教え方を、
いきなり揃えなくて大丈夫です。
やり方を正解・不正解で決め直す必要もありません。
まずは、それぞれが
「どこで迷っているのか」
「どこで止めているのか」
を整理するところから始めます。
① まずは「ベテランそれぞれのやり方」を集めるだけで十分
抽象で終わらせないために、集め方も具体にします。
例えば―
- 作業Aを教えるとき、最初に何を言うか
- 作業Aで「ここは触るな」と言うポイント
- 作業Aで「ここまでできたら合格」と思うライン
- 作業Aで「新人がつまずく場面」
この段階では、
「どのやり方が正しいか」は決めません。
まずは、
現場で実際に行われているやり方を、
そのまま書き出してもらうだけで十分です。
② 次に「合格ライン」を1枚にする
OJTで揉めるのは、だいたい“合格の定義”が人によって違うからです。
合格ラインは、立派な文章でなくて大丈夫です。
現場用のメモで十分です。
- 「一人でやってOK」な状態:例)チェック項目10個を見ながらならOK
- 「確認してから」な状態:例)顧客に影響が出る操作は必ず声かけ
- 「絶対NG」:例)判断を隠す、ログを消す、自己判断で納期を変える
ここも「評価」ではなく、「線を引く目的」を共有する姿勢が必要です。
目的は、ベテランを縛ることではなく、新人が迷わず動けるようにすることです。
③ 「教える順番」を決める。全部教えない
新人が最速で育つ職場は、最初から全部を渡さないことが多いです。
ここでよくある失敗が、
- 全体像
- 注意点
- 例外
- 過去の事故
を全部盛りすることです。
新人は情報で固まり動けなくなります。
おすすめは、順番を3段階に切ることです。
- まず:安全に回すための最低限(ミスしても社内で止まる範囲)
- 次に:品質を上げるコツ(スピード、判断の精度)
- 最後に:例外対応(急ぎ、トラブル、イレギュラー)
この3段階は、
すべてを一度に教えるためのものではありません。
まずは、新人が止まらずに動ける範囲を渡す。
そこから、
少しずつ広げていく考え方です。
「全部教える」より「動ける範囲を渡す」姿勢のほうが、現場が回りやすいです!
現場で使えるOJTテンプレ|研修担当者が持てる“整理シート”を作る

口頭だけで話していると、
「言った・言っていない」になったり、
忙しさの中で流れてしまったりします。
紙があることで、
「ここまでは決まっている」という前提を、
現場と共有しやすくなります。
ここでは、研修担当者が引き取れる形にします。
A4一枚でOKです。
OJT整理シート(例)
- 対象業務:例)受注処理
- 目的:例)ミスなく当日中に回せる
- 合格ライン:例)チェックリストを見ながらなら一人で完了できる
- NGライン:例)顧客連絡の文面変更は自己判断しない
- つまずきポイント:例)例外の時に止まる
- 教える順番:①最低限 → ②品質 → ③例外
- 確認タイミング:例)初週は毎日15分、2週目は隔日
このシートは、
現場を管理するためのものではなく、
迷いを減らすために使います。
もしも―
- できているかをチェックされるもの
- 守れていないと指摘されるもの
として伝わると、
ベテランは本音を出さなくなり、
新人は判断を返す行動に寄ってしまいます。
結果として、
現場の迷いが見えなくなり、
OJTが回りにくくなります。
よくある正論|「新人が自分で考えないと」は正しい。でも現場では効かない理由がある
正しい言葉ほど、現場で空回りすることがあります。
よく言いがちな正論の例を出します。
- 「新人が自分で考えて動いてほしい」
- 「分からないなら聞いてほしい」
- 「主体性を持ってほしい」
どれも正しいです。
ただこの正論が現場で効かない理由はシンプルで、新人が“考えていい範囲”を知らないからです。
「どこまで自分で決めてよくて、どこから相談なのか」が見えないと、新人は動けません。
だから、さっきの合格ライン・NGラインの整理が効きます。
正論を捨てるのではなく、正論が動く前提を作ります。
OJTを回すコツ|研修担当者が「現場の通訳」になる

現場は忙しいです。
新人は遠慮します。
ベテランは経験で話します。
ここで研修担当者がやれる役割は、次の3つです。
役割① 現場の言葉を「判断ルール」に落とす
現場では、善意から、こんな言い方がよく使われます。
例)「この場合は臨機応変で」
→ 「顧客に影響が出るときは声かけ」
→ 「社内で止まるなら一回やってOK」
こういう形に変えると、
現場の善意が、
新人にも判断の形として伝わります。
役割② ベテランのやり方を“統一”ではなく“共通部分”にする
全員のやり方を揃えるのは とても難しいです。
ただ、共通して守るラインは作れます。
たとえば、やり方は人によって違っても、
「顧客に影響が出る判断は、必ず一声かける」
というラインだけが共有されていれば、
現場での揉め事は起きにくくなります。
ここに寄せると、現場が揉めにくいです。
役割③ 確認の場を「指導に入らない段階」で設計する
研修後の確認というと、ついつい
- 「ちゃんとできたか」
- 「できるようになったか」
を聞く場になりがちです。
ただ、
「できた・できない」を詰める場にすると、
現場では本音が出にくくなります。
つまり、確認したい正しい情報が上がってこなくなります。
逆に、
- 「どこで止まったか」
- 「どこで迷ったか」
を出す場にすると、
少しずつ改善が回り始めます。
評価しない姿勢で、事実だけを集める場にしましょう!
まとめ|OJTは“教え方”より“迷いを減らす整理”で回りはじめる
最後に、研修担当者と現場に主語を戻します。
- OJTがうまくいかないとき、原因は人より「迷う状態」にある
- 「最速で育てる」より「最速で迷いを減らす」に切り替えると、現場が動きやすい
- 改善は、いきなり統一ではなく、やり方の見える化と合格ラインの線引きから始める
- 研修担当者は、現場の言葉を判断ルールに翻訳する役割を引き取れる
すぐに完璧に変わらなくて大丈夫です。
現場が忙しいのも、ベテランが疲れているのも、新人が遠慮してしまうのも、正直よくある話です。
まずは「迷いが起きるポイント」を一つだけ言葉にして、紙に落とす。そこからで十分です。
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研修内容を一度、整理してみませんか?

研修内容を整理するところから、一緒に考えるお手伝いもしています。
- 何を教えるか
- どこまでやるか
- どう進めるか
研修を考える中で、
ここが曖昧なまま進んでしまうケースはとても多いです。
その結果、
- 「伝えたつもりだった」
- 「現場で行動が変わらなかった」
という声もよく聞きます。
まずは、今の研修内容や悩みを言葉にして整理するところからで大丈夫です。
まだ具体的に決まっていなくても問題ありません。
この研修、どう組み立てればいいんだろう?
そう感じたタイミングが、見直しを始めるベストなタイミングです。
お気軽にご相談ください。