なぜ「あなたはどう思う?」と問い返すと部下の主体性が育つのか
結論:主体性は「問い返し」で育つ
部下が質問してきたとき、上司がすぐ答えを出すのではなく、
あなたはどう思う?
と問い返す。
この関わり方は、感覚的な指導ではなく、教育学や心理学、マネジメントの分野でも『主体性を育てる方法』として知られています。
では、なぜこの一言が人の行動を変えるのか。
これには、いくつかの考え方があります。
ソクラテス式質問法|答えを与えるより、思考を引き出す
教育の世界では「ソクラテス式質問法」という方法があります。
これは、教師が答えを教えるのではなく、質問を通して相手に考えさせる教育方法です。
例えば、次のようなやり取りです。
次どうすればいいですか?
あなたはどう思う?
このやり取りは一見すると遠回りに見えると思います。
しかし、教育分野では
答えを与えるよりも、自分で考えた経験の方が理解が深まりやすい
と言われています。
自分で考え、仮説を持ち、判断する。
そのプロセスそのものが、思考力を育てるからです。
コーチングの基本|答えは本人の中にある
ビジネスの現場でも、同じ考え方があります。
それは、『コーチング』という人材育成の手法です。
コーチングでは、基本的に
- 答えを教えない
- 質問で考えを引き出す
というスタンスを取ります。
例えばよく使われるのは、
- あなたはどう思いますか?
- どんな選択肢がありますか?
- 一番現実的なのはどれですか?
という質問があります。
なぜこの方法が使われるのか。
理由はシンプルです。
自分で出した答えの方が、行動につながりやすいから
です。
人は、『与えられた答え』よりも、『自分で考えた結論』の方を大切にします。
自己決定理論|人は「自分で決めた」と感じたときに動く
心理学には「自己決定理論」という考え方があります。
この理論では、人が主体的に行動するためには、次の3つの要素が重要だとされています。
- 自律性:自分で決めている感覚
- 有能感:できるという感覚
- 関係性:信頼できる人とのつながり
上司がすぐに答えを出してしまうと、部下は判断する機会を持てません。
すると「自律性」が育ちにくくなります。
一方で、「あなたはどう思う?」と問い返されると、自分で考え、判断する機会が生まれます。
この経験の積み重ねが、主体性につながっていくのです。
ただし、前提条件もある
ここで一つ注意点があります。
この方法は万能ではなく「注意点」もあり、ただ問い返せばいいというものではありません。
例えば、
- 判断基準が共有されていない
- 任せる範囲が曖昧
- 新人でまだ経験が少ない
こうした状態で「あなたはどう思う?」だけを繰り返すと、部下は放置されたように感じることもあります。
だからこそ大切なのは、
- 判断の枠を渡す
- 質問で考えさせる
- 提案型の相談を評価する
この順番です。
この流れが揃うと、
「確認型」から「提案型」へと相談の形が変わっていきます。
主体性は問いかけから育つ
主体性は「もっと考えろ」と言われて育つものではありません。
考える機会があり、判断する経験があり、その行動が評価される。
その積み重ねの中で、少しずつ育っていきます。
「次どうすればいいですか?」
という相談が、
「私はこう考えましたがどうでしょうか?」
に変わる瞬間。
その小さな変化は、上司の問いかけから始まることも少なくありません。