管理職研修のやり方|新人管理職が現場で迷わなくなる3つの設計

目次

結論|新人管理職研修で一番大事なのは「考えるための基準」を渡せる状態をつくること

新人管理職研修が成功するかどうかを分けるのは、知識やスキルをどれだけ教えたかではありません。

新人管理職自身が、「自分で成果を出す立場」から「部下が成果を出せるように支える立場」へ変わったことを理解できているかどうかです。

ここが曖昧なままだと、どれだけ良い研修をしても、現場の動きがあまり変わらないことがあります。

わたし自身は、管理職を経験したことはありません。
ただ、営業の仕事をしていた頃、二人の上司の下で働き、その違いをはっきり感じた経験があります。

わたしを一人前に育ててくれた上司は、ただ「契約を取れ」「件数を増やせ」と言う人ではありませんでした。

声をかけた人数が少なかった日も、すぐに数字だけを責めることはありません。

  • 今日はどんなお客様に声をかけた?
  • 立ち止まってくれた人に、共通点はあった?
  • 次はどこを変えたら聞いてもらえそう?

このように結果ではなく、そこに至る考え方を一緒に整理してくれました。

目標にはとても厳しい人でしたが、数字の意味と、次に試すことが分かるので、わたしは自分で考えながら動けました。

一方、あるとき、“わたし”“新人”“新人の上司”の三人で動いていた時期がありました。

新人を教えていた上司は、ほとんど数字の話しかしていませんでした。

  • 今日は何件声をかけた?
  • まだこれだけ?
  • 取れないなら、もっと数を増やして。

新人がどこで困っているのかを聞くことは、ほとんどありません。

最初は一生懸命だった新人が、しばらくすると変わっていきました。

お客様の反応を見て声をかけるのではなく、「あと何件やれば終わるか」を気にするようになりました。

興味がなさそうな人にも、数を埋めるために声をかける。

何を伝えればお客様の役に立つかよりも、上司に報告する数字を増やすことが優先されていたのだと思います。

新人は、わたしと二人で食事していた時も「どうすれば契約につながるか」ではなく、「どうすれば上司に怒られないか」を気にしていました。

新人にやる気がなかったわけでも、考える力がなかったわけでもありません。
考えるための材料を渡されないまま、数字だけを求められた結果、成長ではなくただ作業をこなすことだけに精一杯になっていたのです。

結果的には、わたしがこっそり上司のさらに上司に報告し、その新人は教育の上手な人の下につき元気に働いていました。

この“私の上司”“新人の上司”、二人の違いは、優しさではありません。
数字の意味と、考えるための基準を渡していたかどうかです。

新人管理職研修で最初に整えたいのは、まさにこの一点です。

プレイヤー時代の「自分が結果を出す」から、管理職の「部下が自分で考えて動けるように、基準を渡す」へ。

この切り替えを言葉にできると、研修後の現場は少しずつ変わり始めます。


なぜ新人管理職研修はうまくいかないのか?

新人管理職研修を考えるとき、多くの方は「何を教えるか」から入ります。

ただ、うまくいかなかった研修内容を見せてもらうと、教えた内容そのものが原因ではないことがほとんどです。

つまずいているのは、もっと手前の構造です。


「研修はやったのに変わらない」が起きる理由

わたしが実際に、お問い合わせで「新人管理職の研修について」相談をいただく場合、次のような状態になっていることが多いです。

  • 研修は一通り実施した
  • 内容も決して悪くなかった
  • それでも、現場の様子があまり変わらない

ただ、この状態になる原因は、そこまで複雑ではありません。

ヒアリングの際に「新人管理職ご本人が、結局は自分で動いてしまっていませんか?」と尋ねると、「いや~、どうですかね~」という反応が返ってくることがよくあります。

つまり、研修内容そのものに意識が向きすぎていて、現場の実態が見えていないのです。

その場合、わたしは新人管理職の方に、簡単なアンケートフォームへ答えてもらうことをお願いしています。

すると多くの場合、新人管理職本人が、部下の相談にどう答えればいいのか分からず、結局は自分で手を動かしてしまっている。

そんな実態が見えてきます。

ここで、冒頭の営業会社の話を思い出してください。

数字だけを渡された新人は、「どうすれば契約につながるか」ではなく「どうすれば怒られないか」で動くようになりました。

考えるための基準を渡されなかったからです。

実は、新人管理職にも同じことが起きています。

会社は「部下を育てろ」「チームをまとめろ」という期待だけを渡し、そのために何をどう考えればいいのかという基準は、渡していないことが多いのです。

基準がないまま現場に立った新人管理職は、自分が一番よく知っているやり方、つまりプレイヤーとしての動き方に戻ってしまいます。

研修が変化につながらないのは、この構造が残ったままだからです。


新人管理職が抱えやすい本音

新人管理職に答えてもらうアンケートには、「自分でやったほうが早いと思って、つい手を動かしてしまう」という項目があります。

ここに、よくチェックが集まります。

プレイヤーとして評価されてきた人ほど、この本音を抱えがちです。
優秀だからこそ管理職に任命されたのに、その優秀さが、かえって「自分でやってしまう」動きにつながってしまうのです。

ここで研修が「あなたの役目は部下を育てることです」と役目だけを伝えても、多くの場合、状況は変わりません。

何をどう考えて関わればいいのかという基準が渡されないまま、役目という言葉だけが増えるからです。

その結果、新人管理職はこんな感覚を抱えることになります。

今まで通りに動くと、上司から「それは管理職の役割じゃない」と言われる。
かといって、どう関わればいいのかは分からない。
肩書きは管理職になったのに、チームの成果につながっている実感も持てない。

これらは、やる気がないからでも、能力が足りないからでもありません。

動き方を急に変えられず、戸惑ってしまうのは自然なことです。



管理職の仕事は「自分が頑張ること」ではない

新人管理職研修で、最初にきちんと整理しておきたいのが、プレイヤーと管理職の役割の違いです。

同じ「頑張る」でも、頑張る方向がまったく変わります。

プレイヤー管理職
評価されるもの自分の成果チームの成果
求められる役割正解を出す判断の基準を示す
動き方自分で動く人に任せる
ミスへの向き合い方ミスを避けるミスから学ばせる

この表を見ると当たり前に感じますが、頭では分かっていても、行動が切り替わらない人がほとんどです。

そして注目したいのは、管理職に求められる役割が「判断の基準を示す」という点です。

冒頭で、わたしを育ててくれた上司がやっていたことと、まったく同じです。

上司は正解そのものを毎回与えるのではなく、次に何を試せばいいかを考えるための基準を渡していました。
管理職の仕事の中心は、ここにあります。

この整理をしないまま、コーチングやフィードバック、マネジメント理論を教えても、「いい話だった」で終わってしまうことが多いのです。

研修担当者としてまず伝えたいのは、「管理職になったら、頑張り方そのものが変わるんだよ」という一点です。


新人管理職研修で最初に扱うべき3つのテーマ

先でも話しましたが、新人管理職研修というと、どうしても「何を教えるか」から考えがちです。

しかし、実際は研修内容そのものより、その手前の設計でつまずいているケースが目につきます。

ここまで見てきたように、新人管理職がプレイヤーの動きに戻ってしまうのは、考えるための基準を渡されていない場合がとても多いです。

だとすれば、研修で最初に整えるべきは、スキルより先に「どんな基準を渡すか」です。

次の3つを先に言葉にしておくだけで、研修後の手応えはかなり変わります。


①「管理職として何を期待しているのか」を言葉にして伝える

まず研修担当者が整理したいのは、管理職に何を求めているのか、会社としてどんな役割を期待しているのか、という点です。

「部下を育てる」「チームをまとめる」。

これらは方向としては間違っていませんよね。

しかし、それだけでは管理職になったばかりの人にとって「具体的に何をすればいいのか」までは分からないことがあります。

このことは、実際にリクルートマネジメントソリューションズが2024年に実施した調査データにも表れています。

この調査では、人事担当者が管理職に最も期待していること、管理職自身が重要だと考える役割は、どちらも「メンバーの育成」でした。

つまり、会社側も管理職本人も、「部下を育てることが大切」という認識は共通しています。

一方で、実際の現場では簡単ではありません。

管理職が日々のマネジメントで最も難しいと感じていたのは、「メンバーの仕事へのやる気を高めること」でした。
半数を超える管理職が、ここに難しさを感じています。

「育成が大切」だとは分かっている。
でも、実際に部下へどう関わればいいのかは難しい。

このギャップが、管理職が現場で迷う理由の一つだと考えられます。

だからこそ、「部下を育ててください」と伝えるだけで終わらせず、具体的に何をすればいいのかまで示します。

たとえば、こんな場面。

  • 朝、部下に「今日は何を進める予定?」と聞き、優先順位がずれていればその場で一緒に整理する
  • 部下が仕事の進め方で止まっていたら、すぐに答えを教えるのではなく、「今回の目的って何だったっけ?」と確認する
  • 「どうすればいいですか?」と聞かれたときは、「今のところ、自分ではどうしようと思ってる?」と一度考えを聞いてみる
  • 仕事が終わったあとに、「今日やってみて、やりにくかったところあった?」と振り返る時間をつくる

こうして見ると、「部下を育てる」という仕事も、特別なことをするわけではありません。

日々の仕事のなかで、部下が迷ったときに一緒に整理したり、すぐに答えを渡さず考える機会をつくったりする。

研修では、こうした「明日から何をするのか」が見えるところまで具体的にしておくと、管理職も現場に戻ってから動きやすくなります。


②「やらなくていいこと」をはっきりさせる

以前、管理職になったばかりの人と打ち合わせがありました。

その管理職の人はこう言っていました。

新人管理職

評価された立場だからこそ頑張りたくて、つい全部やろうとしてしまうんですよね。
部下を育てるのが仕事なのは分かっているんですが、仕事を押しつけている感覚もあって、バランスが難しくて

そこで、もう少し詳しく聞いてみると、次のような動きが重なっていました。

  • 部下の資料を全部チェックする。
  • 細かいところまで口を出す。
  • 判断を先回りして答えてしまう。

本人は一生懸命なのに、気づくと毎日バタバタして、どっと疲れている。
そんな状態になっていました。

これは、冒頭の営業会社の上司の話と、実は裏返しの関係です。

数字だけを渡して放っておく上司も問題ですが、逆に、部下の仕事をすべて巻き取ってしまう管理職も、部下から考える機会を奪ってしまいます。

どちらも、部下が自分で動けなくなる点では同じです。

ここで研修として共有しておきたいのが、「管理職だから、ここまではやらなくていい」という線引きです。

  • 最終確認だけすればいい仕事
  • 任せて見守る仕事
  • 失敗しても、止めずに見守っていい仕事

この境目を言葉にしておくだけで、新人管理職の気持ちはかなり楽になります。

この整理があるかないかで、研修後の消耗度は大きく変わります。


③「失敗していい範囲」をあらかじめ共有する

管理職になると、一つの判断がチーム全体に影響する場面が増えます。

そのぶん、決めること自体に慎重になる人もいます。

決断を先延ばしにする、無難な選択ばかりになる、すぐ上司に確認したくなる。
わたしは、こうした動きは能力の問題というより、「失敗してはいけない」という思い込みが強く働いていることが多いです。

ここで思い出してほしいのが、冒頭の営業会社の新人です。

あの新人は、いつのまにか「どうすれば契約につながるか」ではなく、「どうすれば怒られないか」で動くようになっていました。

どこまでの失敗なら許されるのかが分からないと、人は失敗しない方向、つまり無難なほうへ縮こまっていきます。
これは、新人でも管理職でも変わりません。

だからこそ研修では、取り返しがつく失敗と、絶対に避けたい失敗の2つを、あらかじめ言葉にしておきます。

  • 社内で止まるミスなら、任せて経験にしてもらう
  • お客様に直接影響が出る判断は、事前に相談する

この線が引けていると、現場での動きが少しずつ変わります。
「ここまでは自分で決めていいんだ」と思えるだけで、新人管理職はかなり動きやすくなります。

そして、この線引きは、新人管理職本人のためだけのものではありません。

管理職が「失敗していい範囲」を持っていれば、今度はその管理職が、自分の部下に対して同じ線を引けるようになります。

冒頭で、わたしを育ててくれた上司が「社内で止まるミスは経験にすればいい」と構えていたからこそ、わたしは安心して自分で考えられました。

失敗の範囲を示すことは、管理職から部下へと、そのまま受け継がれていきます。


新人管理職が身につけておきたい3つの力

ここまでは、研修担当者や会社が「事前に何を渡すか」という設計の話でした。
ここからは、新人管理職が現場に立ったとき、その場でどう振る舞うか、という話に移ります。

難しいスキルが足りなくて困る場面というのは、実はそれほど多くはありません。

多いのは、「その場でどう返せばいいか分からず、手が止まる」瞬間。

ここでは、そうした場面で効く3つの力を整理します。

どれも専門的な技術ではなく、日々のやり取りの中で少しずつ身につくものです。


①「すぐ答えを言いたくなる」を一度止める力

新人管理職ほど、部下から相談されると、つい答えを言いたくなります。

特に「今すぐ決めないといけない」と感じる場面では、思わず口を出してしまいがちです。

自分がやったほうが早い気がする、ここで間違えさせるのは不安。

この気持ちは、新人管理職についたことがない人でも、わかってあげられる気持ちだと思います。

つまり、この気持ちはとても自然なものです。

ただ、毎回答えを言ってしまうと、部下は「考える前に聞けばいい」と学習してしまいます。

部下が相談に来る、すぐ正解を伝える、次も同じ相談が来る。
この流れが続くのです。

ここで、冒頭でわたしを育ててくれた上司を思い出してください。

あの上司は、「次はどこを変えたら聞いてもらえそう?」と、答えではなく問いを返していました。
だからわたしは、自分で考える癖がつきました。

研修では、この関わり方を軽く練習しておくと効果的です。

練習例

部下:この案件、どう進めればいいですか?
管理職(つい言いがち):ああ、それはこうやって、こう進めて。
管理職(一拍置く):今の時点で、どこまでは進められそう? 迷っているのはどのあたり?


② 話を聞いて、整理して返す力

いわゆる「傾聴スキル」を、無理に身につける必要はありません。

新人管理職にまず必要なのは、話を要約し、論点を整理して返すことです。

たとえば、部下が相談に来て、どう進めるか迷っている様子だったとします。

部下

Aの方法で進めようと思っているんですけど、Bのほうが早い気もしていて……。ただ、Bだと後で修正が増えそうで、どっちがいいのか迷っています。

と話したとします。

こんなとき、すぐに「じゃあAでいこう」と答えを出すのではなく、

新人管理職

つまり、早さを取るならBだけど、あとで手戻りが増えるのが心配なんだね。一方でAなら安心して進められそうだけど、時間がかかる。その間で迷っている感じかな?

と一度整理して返します。

すると、部下自身も「自分は何に迷っているのか」が見えやすくなります。

そのうえで、

今回、一番優先したいのは何だっけ?
そこを考えると、どっちが合いそう?

と続ければ、ただ答えを教えるだけではなく、本人が考える時間もつくれます。

ここでも、冒頭の上司の関わり方が参考になります。

あの上司は「立ち止まってくれた人に、共通点はあった?」と、わたしの断片的な話を、次に使える形に整理してくれました。


③「あとで後悔する怒り方」を減らす力

管理職になると頭では分かっていても、「つい強い言い方になってしまった」という場面が出てくることがあります。

以前、ある研修担当者から、こんな相談をいただいたことがあります。
その担当者は、現場で新人の教育を任されている方から、こう相談されたそうです。

強く叱っても注意しても意味がないのは分かっているのに、つい感情的になってしまう。
自分は教育係に向いていないと思う。
でも、この担当を同期に押しつけるのも違う気がして。

この相談を受けて、担当者は最初、新人の教育内容そのもの、つまり研修を見直そうとしていました。

もちろん、それも大切です。

ただ、わたしは、なぜその方が感情的になってしまうのかも一緒に考える必要があると思い、ヒアリングをお願いしました。

話を聞いてみると、その方は、ただ短気で怒っているわけではなさそうでした。

同じミスが続いたり、余裕がなかったりする場面で、つい言葉が強くなっていたのです。

そこで、「怒らないようにしましょう」ではなく、行動そのものを決めることにしました。

「強く言いそうになったら、その場ではまず原因の確認だけする」という形です。

たとえば、これまではこういう流れでした。

新人がミスをする → 「なんでできないんだ」と思う → すぐ注意する

これを、次のルートに置き換えます。

新人がミスをする → 「今、自分はかなりイラッとしている」と気づく → 「まず、どういう判断をしたか教えて」と聞く → 原因を確認する → 必要な指導をする

ポイントは、感情をなくそうとするのではなく、感情が出た自分に気づいて、いったん別の行動に乗せることです。「今、イラッとしている」と自分で気づけるだけで、次の一手が変わります。

そしてもう一つ、見落とせない点があります。

その方が「教育係に向いていない」とまで感じていたことです。

これを「本人の性格やスキル不足」と決めつけてしまうと、話はそこで終わってしまいます。

実際には、教育係に負荷が集中していないか、教育のやり方が個人任せになっていないか、といった仕組みの側も確認する必要があります。

感情的になってしまう背景には、本人の性格ではなく、支える仕組みの不足が隠れていることも少なくありません。


管理職研修を「一度きり」で終わらせない工夫

管理職研修は、当日が一番盛り上がります。
ただ、その熱がどれくらい残るかは、研修後の動き次第です。

「いい研修だったはずなのに、数週間すると誰も話題にしなくなる」。
そんな経験のある担当者も多いのではないでしょうか。

ここでは、無理なく続けられて、実際に差が出やすい3つのフォローを紹介します。


①「全部やろう」としない

研修が終わった直後は、「あれもやらなきゃ」「これも意識しなきゃ」と、やる気が高まりがちです。

ただ、そのモチベーションは、ほとんどの場合そう長くは続きません。

最初の1週間だけ頑張って、気づいたら元に戻っている。
よくある流れです。

そこで、研修後に決めることは、一つだけにします。

  • 部下が相談に来たら、すぐ答えず、一度「どう考えている?」と聞いてみる
  • 夕方に5分だけ、進捗を聞く時間をつくる

これくらいで十分です。

「これだけでいいのかな」と感じるくらいが、実際にはちょうどいいことも多いです。

思い出してほしいのは、冒頭でわたしを育ててくれた上司です。

あの上司も、一度にすべてを求めてきたわけではありません。

「次はどこを変えたら聞いてもらえそう?」と、次の一歩だけを一緒に決めてくれました。
新人管理職に対しても、同じでいいのです。


②「研修の話」を現場に持ち帰る

新人管理職が研修を受けても、その上司が内容を知らないままだと、すれ違いが起きやすくなります。

たとえば、新人管理職が「すぐ答えを言わず、まず部下に考えてもらう」という関わりを研修で学び、現場で試していたとします。

ところが、それを知らない上司が横から、「考えさせるのも大事かもしれないけど、仕事が遅れる」と口を出す。

せっかく始めた新しい関わりが、上司の一言で止まってしまうのです。

逆に、新人管理職の上司が、研修で何を学んだか、これから何を意識しようとしているかを知っているだけで、このような一言は減ります。

研修後に一言でも上司に共有されているかどうかは、思っている以上に大きな差になります。

これは、記事の最初から繰り返してきたことと同じ構造です。

新人管理職が部下に「基準」を渡す必要があるように、その新人管理職もまた、上司から「ここまでできていれば大丈夫」という基準を渡してもらえると、動きやすくなります。

基準を渡す関わりは、現場のどの階層でも効きます。


③「うまくいかなかった話」をする場を残す

研修後の振り返りは、「決めた行動を実際に試せたか」「成果につながったか」を確認する場になりがちです。
ただ実際には、うまくいかなかった話のほうが、次につながることも多いです。

1か月後、3か月後に、「やってみてよかったこと」と「正直、難しかったこと」を言葉にする時間を、少しだけつくります。

ミーティングの最後に5分など、形式ばった場でなくても大丈夫です。

先ほど、感情的になってしまうと悩んでいた教育担当の方の話をしました。
あの現場でも、後日、同じように振り返りの時間を取ってもらいました。

「よかったこと」として挙がったのは、「強く言いそうになったら、その場ではまず原因確認だけする」と行動で決めたことで、以前よりイライラしにくくなった、という変化でした。

行動として決めておくことが、たしかに効いていたみたいです。

一方で、「正直、難しかったこと」も出てきました。

ある新人が、何度も同じ失敗を繰り返し、なかなか改善しない。

すると、「こちらはちゃんと対策しているのに」という思いから、仕事終わりに、以前よりイライラしてしまうときがある——。

大切なのは、この「難しかったこと」を口に出せたことです。

うまくいったことしか言えない場だったら、この悩みは表に出ないまま、一人で抱え込まれていたはずです。

言葉にできたからこそ、

その新人の失敗は、本当に本人の問題なのか
指示の出し方や、任せ方に変えられる余地はないか

と、次の一手を一緒に考えられます。

冒頭の営業会社の話ともつながります。
数字だけを渡された新人は、「怒られないこと」を優先するようになりました。

うまくいかなかったことを言えない空気は、部下を「失敗を隠す」方向に追い込みます。

逆に、「難しかった」と正直に言える場があるだけで、新人管理職も、その先の部下も、次の一歩を踏み出しやすくなります。


まとめ|新人管理職研修は「覚えさせる場」ではない

新人管理職研修の目的は、知識を増やすことでも、立派な管理職に見せることでもありません。

役割を理解し、行動を少し変え、迷ったときの判断軸を持つ。
この状態をつくることです。

冒頭の二人の上司の違いも、突き詰めれば、考えるための基準を渡していたかどうかでした。

「部下を育てろ」という言葉だけを渡すのではなく、何をどこまでやればいいのか、どこまでは失敗していいのか、迷ったらどう関わればいいのか。

その基準を本人が持てる状態にすることが、研修で整えたいことのすべてです。

これができていれば、新人管理職は立ち止まる回数が減り、その先の部下にも、同じように基準を渡せるようになります。

完璧な研修でなくても大丈夫です。

新人管理職が少し迷いにくくなる設計になっていれば、研修としての役割は十分に果たせています。

管理職研修は、正解を教える場というより、「これでいいのかな」と立ち止まる回数を減らす場なのかもしれません。


研修内容を一度、整理してみませんか?

ここまで読んで、「役割は伝えているつもりだけど、現場で動けているだろうか」と感じた方もいるかもしれません。

テンツキスタジオでは、研修内容を整理するところから、一緒に考えるお手伝いをしています。

  • 管理職に、何を期待するのか
  • どこまでを任せ、どこからは支えるのか
  • 迷ったとき、どう関わればいいのか

この記事でお伝えしてきたとおり、ここが曖昧なまま進むと、「伝えたつもりだった」「現場で行動が変わらなかった」という状態になりがちです。

形式
オンライン

所要時間
30分

費用
無料

まだ具体的に決まっていなくても構いません。「うちの場合はどうだろう」から、ご相談ください

そう感じたタイミングが、見直しを始めるいいタイミングです。お気軽にご相談ください。


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この記事を書いた人

中小企業の研修設計・研修動画制作を専門としています。
研修担当者の「何を教えればいいかわからない」という悩みから一緒に整理し、現場で使える研修づくりをサポートしています。

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