指示待ち人材は本当に悪いのか?|研修設計が社員の行動を決めている理由
結論|「言われたことだけをこなす人材」は悪ではない。研修設計がそう育てている
考えて動いてほしいんですけど、
勝手なことはしないでほしいんですよね…
この言葉は研修担当者から、実際によく聞く言葉。
矛盾しているようですが、
現場の本音としてはとても自然なんですよね。
結論から言います!
「言われたことだけをこなす人材」は、必ずしも悪ではありません。
その行動の多くは、研修設計と日々の教え方の積み重ねによって生まれています。
この記事では、
- なぜ指示待ち人材が生まれるのか
- それは本当に問題なのか
- 研修設計をどう変えれば、考えて動ける人材が育つのか
を、中小企業の研修担当者目線で、明日から使える形まで落とします。
この記事を読むと、ここまでできるようになる
読み終えたあと、次の状態を目指します。
- 指示待ち人材が生まれる理由を、自分の言葉で説明できる
- 研修資料の「直すべき場所」がはっきりする
- 現場と共有できる“同じ言葉”を持てる
これは精神論ではなく、研修設計の話です!
なぜ「言われたことだけをこなす人材」が生まれるのか

まず「考えて動いてほしい」と言いながら、
同時に「余計なことはしないで」と伝えてしまっていませんか?
この矛盾が積み重なると、社員は
“考えないほうが安全”
だと学びます。
これは実際私も若い頃言われましたが、
“考えないほうが安全”という思考で落ち着いてしまったことがあります。
このように、指示待ちが生まれる理由は、意外とシンプルなんです。
理由①|現場では「考えるな」と教えてきた
新人研修やOJTで、こんな言葉を使っていませんか。
- 「まずは言われた通りにやって」
- 「余計なことはしなくていい」
- 「勝手な判断はしないで」
これらはミスを防ぐためには、
どれも正しい指示です。
ただ、この言葉だけが続くと、
社員はこう学んでしまいます。
- 考えると怒られる
- 言われたことを守るのが一番安全
そして結果として、考えない行動が定着してしまいます。
理由②|「考えていい範囲」を教えていない
新人や若手が、
手を止めて迷っている場面はよくあります。
ただその多くは、やる気がないわけではありません。
ただ“自分で決めていいのかどうか”が分からないだけなんです。
研修では、「仕事のやり方」や「手順やルール」は細かく教えます。
しかし一方で、
- どこまで自分で判断していいのか
- どこから上司に確認すべきなのか
ここは、意外と説明されていません。
その結果、社員はこう考えます。
勝手に決めて怒られるくらいなら…
まず聞いたほうが安全…
そして選ばれる行動が、指示待ちです。
これは怠けでも性格でもなく、
「一番リスクが低い選択」をしているだけです。
だからこそ研修では、
「自分で考えろ」と言う前に、
- ここまでは自分でOK
- ここからは必ず相談
という線をはっきり引くことが大切なんです。
この線が見えるようになると、
社員は安心して動けるようになります。
理由③|評価や空気が「指示通り」を強化している
「目立ったミスもなく、無難にこなしている」
そんな社員が、
いつも高く評価されているのは現場ではよくある光景です。
評価の場面で褒められるのは、
- トラブルを起こしていない
- 言われたことを正確にやっている
こうした人になりがちです。
一方で、「自分なりに工夫した」り「少し違うやり方を試した」場合、
上手くいけばスルーされて、
失敗すれば注意される。
という扱いになりやすいです。
これが続くと、社員は自然と
- 考えて動くとリスクがある
- 言われた通りにやるのが一番安全
と学び、結果として
考えるより、守った方が得だな。
という行動が定着していきます。
これは本人の性格や意欲の問題ではありません。
評価のされ方や、職場の空気がそう動かしているケースがほとんどです。
だからこそ、
評価や日常の声かけが変わらないまま
「もっと主体性を!!」
と求めても、行動は変わるはずありませんよね。
まず見直すべきなのは、
“何が評価されている空気なのか”
です。
「言われたことだけをこなす人材」は本当に問題なのか

ここまで読むと、
やっぱり指示待ちは問題だ…
と決めつけてしまいそうになるかもしれません。
ただ、ここで一度立ち止まって考えてみましょう。
業務によっては「正解」な場面も多い
- 手順が決まっている業務
- 法令やルールを守る必要がある業務
- ミスが大きなトラブルにつながる業務
こうした仕事では、
- 勝手に判断しない
- 決められた通りにやる
こと自体が、大きな価値になります。
本当の問題は「切り替えられないこと」
問題なのは、
- 指示通りやる場面
- 自分で考えていい場面
この切り替えができない状態です。
そして多くの場合、
それは個人の資質ではなく、
研修で教えていないことが原因なんです。
よくある現場例|なぜ「指示待ち」が抜けないのか

ここで、よくあるケースを1つ紹介します。
- 新人研修
「まずは手順通りに。勝手な判断はしないで」 - 現場OJT
「慣れるまでは言われたことだけでいいよ」 - 半年後
「もっと自分で考えて動いてほしい」
新人側から見ると、
「考えるな」から「考えろ」に
指示が変わった理由が分かりません。
結果として、
- 何を基準に考えればいいのか分からない
- 判断して失敗するのが怖い
この状態が続き、
「言われたことだけをやる人材」が完成します。
研修設計の前提|いきなり「主体性」を求めない

「もっと主体性を持ってほしい」
といっても、そもそも
「考えていい場所」が分からないままでは、人は動けないものです。
この言葉は、便利な言葉ですが、
そのまま投げると逆効果になることがあります。
なぜなら、社員側はこう感じるからです。
- 何をすれば「主体的」なのか分からない
- 勝手に動いていいのか不安
- 失敗したら怒られそう
この状態で「主体性を」と言われても、
余計に動けなくなってしまいます。
考えて動くには、先に「枠」が必要
考えて動いてもらうためには、
まず次の2つをはっきりさせる必要があります。
- ここは考えなくていい仕事
- ここからは自分で考えていい仕事
この枠がないままでは、
社員は毎回「聞くか、黙るか」で迷うことになってしまいます。
例えば、
枠がない職場の場合ー
- 少し判断が必要 → とりあえず確認
- 失敗しそう → 動かない
枠がある職場の場合ー
- 決まっているところはそのまま
- 迷うところだけ自分で考える
つまり、
社員が迷わず動けるかどうかは、
やる気ではなく「枠があるかどうか」で決まるのです。
主体性は「後から育つもの」
主体性は、
最初から持っているものではありません。
- 小さな判断を任される
- うまくいった経験が積み重なる
この流れがあって、
「自分で考えて動いていいんだ」と感じられるようになります。
だから研修では、
「主体性を持て」
と伝える前に、
- どこは決まっているか
- どこからは考えていいか
と判断できる地図を先に渡すことが大切なんです。
これが、考えて動ける人材を育てるための
いちばんのスタートになります!
研修設計テンプレ|指示待ちを生まない3つの箱

「研修設計」と聞くと、
なんだか難しく考えてしまいがちです。
しかし実際は、
そこまで複雑に考える必要はありません。
研修でやるべきことは、
次の3つの箱を用意するだけです。
① 役割の箱|今、何を求めているのか
まずやることは、とてもシンプルです。
それは―
「今はここまででいい」を最初に伝えること
今の段階で、何を求めているのかを言葉にすることです。
たとえば新人研修なら、
こんな伝え方になります。
- 今は正確にできることを大事にしてほしい
- 早さよりも、ミスをしないことを優先する
- 改善のアイデアは、まだ出さなくて大丈夫
これを最初に伝えるだけで、
新人は無駄に悩まなくなります。
新人研修では、
まずこの役割を固定することが大切なんです。
② 判断範囲の箱|どこまで自分で決めていいか
次に決めるのは、
どこまで自分で判断していいかです。
言葉だけで「考えて」と言っても、
社員は動けません。
具体的には、次のように線を引きます。
- 社内で止まる判断なら
→ 自分で決めてOK - お客さんに影響が出るなら
→ まず相談 - お金・契約・ルールが関わるなら
→ 必ず確認
この線が見えると、
社員は安心して判断できるようになります。
判断力は、
「考えろ」ではなく「ここまでOK」で育ちます。
③ 固定業務の箱|考えなくていいこと
最後に、あらかじめ決めておくことがあります。
それが、考えなくていい仕事です。
たとえば、
- この作業の手順は変えない
- やり方は全員同じにする
ここを決め切ると、
社員は「ここは迷わなくていい」と分かります。
その結果、
- 余計な確認が減る
- 本当に考えてほしいところに力を使える
ようになります。
安心があるから、考える余裕が生まれる。
これが、3つ目の箱の役割です。
3つの箱がそろうと、何が変わるのか
- 何を求められているか分かる
- どこまで考えていいか分かる
- 迷わなくていいところが分かる
この状態が整って、
初めて「考えて動ける人」が育ち始めます。
このあと、
このテンプレを研修にどう落とすかを見ていきましょう!
研修にどう落とすか|具体的な進め方

ここまでで、
- 指示待ちが生まれる理由
- 主体性を求める前に整理すべきこと
が見えてきました。
次は、それをどう研修に落とすかです。
難しいことをする必要はなく、
研修の流れに、3つの工夫を足すだけで十分です。
ステップ①|研修冒頭で「今回は考えなくていい範囲」を伝える
研修の最初に、次の3つをはっきり伝えます。
- 今回の研修で目指すゴール
- 今回は判断しなくていいポイント
- 迷ったときはどうすればいいか
たとえば、こんな言い方です。
「今日は、正確にできることがゴールです」
「やり方は変えなくて大丈夫です」
「迷ったら、すぐ聞いてください」
これだけで、
「間違えたらどうしよう」という不安が減ります。
安心できる状態を作ることが、最初の一歩です。
ステップ②|判断幅を絞ったワークを入れる
いきなり、
じゃあ、考えてみましょう!
と言っても、ほとんど考えて動けるはずはありません。
そこで代わりに、答えの幅をあらかじめ絞ってしまいます。
たとえば、
- この3つの選択肢なら、どれを選ぶ?
- この場面は、相談する?それとも自分で決める?
正解はひとつでなくて構いません。
大事なのは、
- どこで迷ったか
- なぜそう判断したか
を言葉にすること。
小さな判断の練習が、考える力を育てます。
ステップ③|研修後のOJTで「同じ言葉」を使う
研修で一番もったいないのは、
現場に戻った途端、 「言っていることが変わってしまうこと」です。
たとえば、研修では、
迷ったら必ず確認してください
ところが現場に戻ると、
いちいち聞かなくていいから
と言われてしまう。
このズレがあると、社員はこう思います。
結局、どっちなんだろう…
その結果、
一番安全な行動=何もしない
を選ぶようになってしまいます。
研修担当者がやりがちなNG

最後に、研修担当者がついやってしまいがちな失敗を整理します。
どれも、
- 悪気があるわけではない
- むしろ一生懸命考えた結果
起こりやすいものです。
だからこそ、
気づかないまま続けてしまいやすいポイントでもあります。
NG①|「主体性がない」で片付ける
本人の問題にしてしまうと、何も変わらない
うまく動けていない社員を見て、
こんなふうに感じたことはないでしょうか。
- 「主体性がないな」
- 「やる気が足りないのかも」
でも多くの場合、
それは本人の姿勢や性格の問題ではありません。
- どこまで考えていいのか
- どこからは確認が必要なのか
この判断の目安を、
教えられていないだけです。
教えていないことは、
どんな人でもできません。
NG②|一度の研修で変わると思う
行動は「一回」ではなく「積み重ね」で変わる
研修を終えたあと、
よし!
これで分かってくれたはずだ。。。
と感じてしまうことがあります。
ただ、
考えて動く力は、
一度の研修では身につきません。
必要なのは、
- 小さな判断を任されること
- それが「大丈夫だった」という経験
この小さな成功の積み重ねで考えて動く力が身についていきます。
研修は、
人を評価する場ではなく、育てる場です。
- できない理由を本人にしない
- 一度で変えようとしない
この2つを意識するだけで、
研修の効果は大きく変わります。
この視点を持つことが、
指示待ちを減らす一番の近道になります。
まとめ|指示待ちは結果。設計を変えれば人は変わる
- 言われたことだけをこなす人材は悪ではない
- 多くの場合、研修設計と教え方の結果として生まれる
- 役割・判断範囲・固定業務を整理するだけで行動は変わる
研修で人は変わりません。
変わるのは、日々の判断の積み重ねです。
それだけで、
指示待ち人材は自然と減っていきます。
「考えて動いてほしい」前に、
考えていい場所を用意してあげましょう!
研修内容を一度、整理してみませんか?

研修内容を整理するところから、一緒に考えるお手伝いもしています。
- 何を教えるか
- どこまでやるか
- どう進めるか
研修を考える中で、
ここが曖昧なまま進んでしまうケースはとても多いです。
その結果、
- 「伝えたつもりだった」
- 「現場で行動が変わらなかった」
という声もよく聞きます。
まずは、今の研修内容や悩みを言葉にして整理するところからで大丈夫です。
まだ具体的に決まっていなくても問題ありません。
この研修、どう組み立てればいいんだろう?
そう感じたタイミングが、見直しを始めるベストなタイミングです。
お気軽にご相談ください。