研修担当者のための課題整理ガイド|現場の悩みを“行動レベル”で見つける方法
【結論】研修担当者がまずやるべきは「課題を行動レベルで見つけること」
研修担当者が最初にやるべきことは、悩みを“行動レベル”まで落とし込むことです。
※「行動レベル」とは、写真や動画に撮れるくらい“目に見える動き”まで言葉を細かくした状態を指します。
例えば――
- 覚えが悪い
- コミュニケーションが弱い
- 新人が自信なさそう
こうした悩みを“ぼんやりした言葉”のまま扱うと、実際の困りごととかけ離れた研修になりやすいんです。
逆に――
- どんな場面で?
- どの行動が?
- 何が不足してる?
まで具体化すると、研修テーマ・内容・評価指標が自然に決まるようになります。
この記事では、現場のモヤモヤを“行動レベル”で整理する具体的な手順を、カジュアルに、実務として使える形でまとめました。
1章|なぜ課題整理をしないと研修は失敗しやすいのか?

まず理由から。
研修がうまくいかない会社には、共通点があります。
それは、課題の定義がフワッとしていること。
たとえばこんな状態。
- 「新人の覚えが悪い」
- 「コミュニケーションが弱い」
- 「報連相をしない」
- 「自信がなさそう」
- 「現場の雰囲気が悪い」
上記はひとつひとつを見ると“それっぽい”です。
しかし、これだけでは研修テーマは決まりません。
さらに困るのは、このような抽象語のまま研修を決めてしまうと次のような失敗をしてしまいます。
①「悩み → 研修」のつながりが弱くなる
- 覚えが悪い
- コミュ力が弱い
などの抽象的な表現は、
“どの場面で”“どの行動が”うまくいっていないのかが見えません。
もし、そのまま研修を決めてしまうと、本来解決すべき問題と関係のない内容を選んでしまい、結果として「目的がよくわからない研修」になってしまいます。
② 現場の期待と研修内容がズレる
現場では、
新人が不明点をそのままにして作業を進めてしまう。。。
という具体的な困りごとが起きているのに、抽象語だけで判断すると、
“マナーが足りないのかな?” → マナー研修
…というように、実際の問題とは違う方向に進みやすくなります。
その結果、現場は“そこじゃない感”を抱えたまま研修が終わってしまいます。
③ 効果測定ができない
行動レベルで課題を整理していないと、
研修担当者は研修後に “何がどれだけ改善したのか” を確認できません。
たとえば、
“報連相が弱い”というざっくりした言い方のままだと、
どの行動ができれば改善と判断するのかが曖昧なままです。
一方で、行動が具体的に定義されていれば、
研修担当者や現場の上司は改善度合いを判断しやすくなります。
例えば――
担当者が仕事で迷ったときに、5分以内に相談できているか
このように行動がはっきりしていれば、
“相談までの時間”という数字や頻度で改善を確認できるため、研修の効果を客観的に評価できるようになります。
2章|課題整理の基本ステップ

課題整理は“センス”ではなく、手順で再現できます。
ここからは、研修担当者がどんな現場でも使えるように、
悩みをスッと具体化するための基本ステップをまとめていきます。
STEP1:抽象語をそのまま扱わない
「覚えが悪い」「コミュニケーションが弱い」「ミスが多い」
こうした言い方は、どれも“現場で起きている問題の結果として表に出ている症状”にすぎません。
実際には――
- 手順の意味を理解できていない
- 確認の習慣がない
などの 具体的な行動不足 が隠れています。
まずは症状に引っ張られず、
“どんな行動ができていないのか” を見つけるところから始めます。
STEP2:「どんな場面で?」をセットで聞く
課題は、必ず現場の“場面”と一緒に起きます。
だから、最初に押さえるべきはこの視点です。
「どの場面でつまずいているのか?」
例としては――
- 電話対応
- 来客時の説明
このくらいの“場面特定”だけでも、改善の方向性が明確になります。
STEP3:「どんな行動が足りない?」を具体化する
場面が分かったら、次に “そのとき本人がどんな行動を取っているのか” を確認します。
例として――
- 本人が、不明点をそのままにして作業を進めてしまう
- 本人が、優先順位を決めずに手をつけてしまう
このように 「誰が・どんな動きをしているのか」 が見えてくると、
行動のクセがはっきりし、研修テーマが自然と絞れていきます。
STEP4:重症度×頻度で優先順位をつける
出てきた課題を、全部そのまま研修に詰め込む必要はありません
研修担当者が押さえたいのは、次の2つです。
- その課題が現場にどれだけ影響しているか(重症度)
- どれくらいの頻度で起きているか(頻度)
たとえば、「ミスが多い」というざっくりした状態よりも、
- 毎日くり返し起きている同じミス
- 放置するとクレームにつながる行動
こうした“影響が大きい/発生頻度が高い課題”のほうが、先に手をつけるべきテーマになります。
“クレームにつながる行動”のほうが優先度は高くなります。
STEP5:課題 → 研修内容 → 評価指標 までつなげる
研修は“受けたかどうか”ではなく、行動が変わったかで成果が決まります。
だから、課題と研修内容と評価指標は、最初からひとまとめにして設計することが大事です。
例としては――
- 課題:報告が遅れて判断が滞る
- 研修内容:相談タイミングの基準づくり
- 評価指標:迷った場面で5分以内に相談できているか
こんなふうに一本の線でつなぐと、研修の効果が現場で実感しやすくなります。
3章|抽象的な悩みを「行動レベル」に落とすテンプレ
ここからは、現場でよく聞く4つの悩みを“具体的な行動”に置き換える練習をしてみましょう。
練習してみる理由としては、
抽象的な言い方のままだと、「何ができていなくて」「どこを直せばいいのか」が見えないからです。
だからこそ、
“そのとき本人がどんな動きをしているのか” に注目します。
ここでは例として、次の4つを取り上げます。
- 覚えが悪い
- コミュニケーションが弱い
- ミスが多い
- 新人が自信なさそう
①「覚えが悪い」
覚えが悪いというと、ただ“覚える力”が弱いと思えますが、
実際には 作業のとらえ方や進め方のクセ が関係していることが多いです。
では実際に“具体的な行動”に置き換えてみましょう。
抽象(表面的な見え方)
新人が「覚えが悪いように見える」
行動レベル(具体的に起きていること)
- 手順の“意味”を理解しないまま進めてしまう
※「意味」とは、なぜその作業が必要なのか、という背景のこと - ポイントをメモに残せていない
- 作業の優先順位を判断できていない
- 経験する回数が少なく、練習の場が足りていない
②「コミュニケーションが弱い」
これも抽象語の代表といえる言葉です。
でも実際には 会話の“どこ”でつまずいているか を見ることで原因がはっきりします。
抽象
コミュ力が弱い気がする
行動レベル
- 自分から声をかける経験が少ない
- 相談するときに何を伝えるか整理できていない
- 相手の状況をよく観察できていない
- 相手をフォローする言葉(例:一言添える)が出てこない
③「ミスが多い」
ミスが多いのはあくまでも行動後の“結果”です。
この問題は、その手前の行動を見ると改善ポイントが見えてきます。
抽象
とにかくミスが多い
行動レベル
- 確認する順番があいまいなまま作業している
- チェックリストを使わず、記憶だけで作業してしまう
- 作業の目的を確認せずに始めてしまう
- 不明点をそのまま進めてしまうクセがある
④「新人が自信なさそう」
自信がないのは“気持ち”の問題と思われがちですが、
実際にはどこまで自分で判断してよいのかがわからないという不安が原因のことが多いです。
抽象
新人がなんとなく自信なさそう
行動レベル
- 質問の仕方がわからず、聞けないまま抱え込んでいる
- 判断の基準(どこまで自分で決めて良いか)を持っていない
- 小さな成功体験が少なく、達成感が積み重なっていない
- 褒められたり認められたりする場面が少ない
行動レベルまで見えると“研修テーマが勝手に決まる”
練習してみてどうだったでしょうか?
このように、抽象的な悩みでも
- 誰が
- どの場面で
- どんな行動をしているか
に視点を移すと、改善すべきポイントが自然とはっきりします。
行動レベルに落とせると、
- 研修で扱うテーマ
- 教えるべき項目
- OJTですべきサポート
- どこを優先するか
──これらが自動的に見えてきます。
ぜひ、この視点で現場の悩みを見てみてください。
一気に改善ポイントが見えやすくなりますよ!
4章|ヒアリングで“本当の課題”を見つける質問術

課題整理の精度は、どれだけ「相手の行動」を聞き出せるかで大きく変わります。
ここでは、研修担当者が“本当のつまずき”を見つけるための質問を、
相手別(現場リーダー・新人・OJT担当者)
にまとめました。
質問のポイントは、
「いつ・どこで・誰が・どんな行動をしているのか」を聞くこと。
この4つが揃うと、課題が一気に具体化します!
現場リーダーに聞くとき
現場のリーダーは、日々の仕事の流れを一番近くで見ています。
だからこそ、
どの場面で、どんな行動が問題につながっているのか
を聞き出すのがポイントです。
例えば――
- 新人や担当者が、どんな場面でつまずいていますか?
- そのつまずきは、作業の前後でどんな行動の流れになっていますか?
- トラブルやミスは、どんな順番で起きることが多いですか?
- 本来は、どんな行動の流れになっていると理想ですか?
- その理想の行動に対して、何が不足していると思いますか?
新人に聞くとき
新人には、
本人の中でどんな迷いが起きているか”
を具体的に聞くのがポイントです。
例えば――
- わからないことが出てきたとき、あなたの中で何が起きていますか?
(例:止まってしまう/誰に聞くか悩む など) - どの場面がいちばん不安に感じますか?
- どんな行動が「できるようになりたい」と感じていますか?
- 周りに質問しづらいと感じるのは、どんな場面ですか?
- 前の仕事や学校と比べて、戸惑った“会社のルールややり方”はありますか?
※ここでいう“文化”=その職場特有のやり方・考え方のこと
OJT担当者に聞くとき
OJT担当者は、新人の“日々の行動のクセ”をよく知っています。
ここでは、
新人がどの行動でつまずきやすいのか
を聞くことが目的です。
例えば――
- 新人がよくつまずく場面はどこですか?
- 新人からよく聞かれる質問はどんな内容ですか?
- この行動ができると、新人の成長が早いと感じるポイントはどこですか?
- 逆に、この行動ができないと現場で困ると感じるのはどんな場面ですか?
質問の質が上がると、課題の見え方が一気に変わります。
まずは今日のヒアリングから、少しだけ意識してみてくださいね。
さらに詳しく記事にしています
5章|ヒアリング結果を“行動別”に整理する方法
ヒアリングで“本当の課題”を見つけて情報を集めても、ただ集めただけでは「メモが増えただけ」で終わってしまいます。
ここから大事なのは、集まった内容を 行動ごとに整理すること です。
行動で整理すると、
- 何を研修で扱うか
- どこをOJTでサポートするか
- 現場の改善ポイントはどこか
が一気に見えやすくなります。
ここでは、研修担当者が使いやすい“行動整理の考え方”をご紹介します!
整理のポイントは「行動の種類で分けること」
まずは、ヒアリングで出てきた内容を次の3つのカテゴリに分けてみましょう。
- 知識(知っているかどうか)
※例:手順の意味、作業の目的など - 技能(できるかどうか)
※例:確認方法、整理して伝えるスキルなど - 姿勢(取り組み方のクセ)
※例:わからないときに抱え込む、相談を後回しにする など
この3つに分けると、
- この行動は研修で教えるべきか?
- 現場での関わり方(OJT)で改善するものか?
の判断がしやすくなります。
例:新人が報告を後回しにする場合
ヒアリング情報を整理すると、次のようになります。
- 知識:
新人が「どのタイミングで上司に報告すべきか」をそもそも知らない - 技能:
状況整理ができず、報告内容をまとめるのがむずかしい - 姿勢:
「迷惑かな…」と思い、相談を遠慮してしまうクセがある
このように行動を分けて整理することで、
- 研修で扱うべき内容
- OJTで教えるべき内容
- 上司が関わるべき内容
が自然に見えてきます。
行動ごとに整理しておくことで、研修で扱うテーマがズレにくくなり、現場で本当に必要な行動にピンポイントで向き合えるようになります。
結果として、「結局どこを直せばいいのか?」という迷いがなくなり、改善の方向性が一気に明確になります。
まずは出てきた情報を“知識・技能・姿勢”の3つに分けてみてくださいね!
6章|“課題 → 研修内容 → 評価指標” を一本線でつなぐ

研修は「実施したかどうか」ではなく、
受講したあとに行動がどう変わったか
で成果が決まります。
そのためには、
- どんな行動を改善したいのか
- そのために何を教えるのか
- どこができれば成功なのか
を、最初からひとつの流れでそろえておくことが大切です。
ここでは、その流れをわかりやすく説明します。
まずは「課題」を具体的にする
課題とは、
どの場面で、誰が、どんな行動に困っているのか を指します。
例えば――
新人が「わからない時に報告が遅れ、判断が止まってしまう」
このとき大事なのは、“報告が遅い”という表面的な状態だけを見るのではなく、なぜその遅れが起きているのか を明らかにすることです。
たとえば、
- 迷ったときに動けなくなるのか
- 相談するタイミングが分からないのか
など、原因の方向性だけ押さえればOKです。
行動の細かい部分はすでに整理できている前提で、それを研修内容につなげていきます。
次に「研修内容」を課題に合わせて選ぶ
課題が見えたら、
その行動を改善するために何を学ぶべきか を決めます。
例えば、先ほどの例の場合――
- 迷ったときに動けなくなる
・改善→迷ったときの「相談するタイミング」を明確にする - 相談するタイミングが分からない
・改善→報告するときのまとめ方(話す順序)を学ぶ
といった研修内容が適しています。
※ここでのポイント
→ 課題に出てきた行動に合わせて研修内容を選ぶこと
→ 「とりあえず一般的な研修」を選ばないこと
最後に「どこが改善したら成功か」の基準をつくる
評価の基準とは、
研修後にどんな行動ができていれば“改善した”と判断できるか
を数字や目安で表したものです。
例えば――
「迷った場面で、5分以内に相談できているか」
このように “どこまでできれば改善と言えるのか” を決めておくと、研修後の変化を具体的に確認できるようになります。
このように、
- 課題
- 研修で学ぶこと
- 改善の目安(どれくらいできればOKか)
を一本の流れでつなぐと、研修の効果が現場で確認しやすくなります。
実際の例でつなげるとこうなる
- 課題:新人が迷ったときに相談せず、自分だけで判断してしまう
- 研修内容:「相談すべきタイミング」と「相談のまとめ方」を学ぶ
- 改善の目安:迷いが出たとき、5分以内に相談できているか
この3つがぴったりつながると、研修は“現場で使える内容”になります!
課題・研修内容・改善の目安がつながっているだけで、研修の成果はぐっと見えやすくなります。
まずは「どこが改善されたら成功?」を決めるところから始めてみてくださいね。
さらに詳しく記事にしています
7章|ケース別:よくある課題を“行動レベル”に変換
ここでは、現場でよくある悩みを例にして、
「行動レベルでは何が起きているのか?」
を具体的に見ていきます。
実際のケースで理解すると、行動整理のコツがすぐ身につきます。
ケースA:新人が自信なさそうでミスが増える
行動課題
- 質問する基準が曖昧
- 作業目的の確認をしていない
- 自己判断が多い
行動課題
- 質問する基準が曖昧
- 作業目的の確認をしていない
- 自己判断が多い
ケースB:ベテランの自己流で現場が乱れる
行動課題
- マニュアルと実務がズレている
- 「正しい理由」を共有できていない
- 周囲と情報共有をしない
研修テーマ
- 共通ルールの作り方
- 情報共有の基準
- 自己流チェック
ケースC:顧客対応が弱くクレームが増える
行動課題
- 語尾が曖昧
- 相手の状況把握不足
- 言い換え・要約が弱い
- 非言語が不安そう
研修テーマ
- 初期対応の型
- 相手の欲求を理解する方法
- 言い換え演習
ケースD:マニュアルが読まれない/守られない
行動課題
- 文字が多い
- なぜ必要かが伝わっていない
- 実務とリンクしていない
研修テーマ
- マニュアル改善
- 手順の目的共有
- チェックリスト運用
8章|“課題整理”でよくある落とし穴

課題整理はやってみるとシンプルですが、実はやり方を間違えると”ズレやすいポイント“がいくつかあります。
ここでは、研修担当者が実務でつまずきやすい4つの落とし穴を、
「なぜ起きるのか」「どんな失敗につながるのか」 まで含めて解説します。
落とし穴①:個人の性格のせいにしがち
- 「新人が消極的」
- 「自信がない」
- 「主体性がない」
こうした言い方は、あくまでも外からそう感じるだけで、本当の原因ではありません。
多くの場合、原因は性格ではなく“行動の基準がないだけ”です。
具体例
- “自信がない”ように見える
原因→「どこまで自分で判断していいか」がわからず動けないだけ - “主体性がない”ように見える
原因→「何を先にやればいいか」の優先順位が決められないだけ
原因を性格のせいと決めつけると、改善策が見えなくなってしまいます。
行動で分解すると、原因は意外とシンプルなケースが多いんです。
落とし穴②:抽象語のまま研修テーマを決めてしまう
- 「コミュ力を上げたいからコミュ力研修」
- 「ミスが多いからミス防止研修」
こうした決め方は“本当に改善したい行動と研修内容がズレやすい”です。
なぜ内容がズレやすいのか?
先ほどのような抽象語では “どの場面の”“どの行動”を改善したいのかが不明確 なため、
研修内容が的外れになりやすいからです。
具体例をみてみよう
- 本当の課題:新人が不明点をそのまま進めてしまう
必要な研修→質問の仕方・相談タイミング
※「コミュ力研修」では解決しない
抽象語は便利ですが、
行動レベルに落とすまで“研修テーマ”は決めないのが鉄則です。
落とし穴③:現場の声だけで判断してしまう
現場の声はもちろん重要です。
しかし、「現場の困りごと=会社として優先すべき課題」ではありません。
どういうこと?
例えば――
現場:「ミスが多いのが困る」
経営:「顧客満足度を上げたい」「離職を防ぎたい」
このように、実は現場と“経営が重視している課題”では、優先すべきポイントが違うことがあります。
具体例
- 現場:「電話対応が不安」
- 経営:「クレーム増加を止めたい」
この場合、優先すべきは “クレームにつながる行動” の改善です。
現場だけを見て研修を作ると、経営の期待とズレた研修 になってしまうことが多いです。
落とし穴④:課題を詰め込みすぎる
課題整理をしていると、どうしても
「これも」「あれも」と気になる点が増えます。
しかし 全部を研修に詰め込むと、逆に何も身につかない研修になってしまいます。
具体例
- 場面ごとに10個の行動課題が出てくる
- すべて取り扱う → 消化不良
- 実務に戻ると「結局どれをやればいいの?」状態になる
研修は“全部盛り”にすると失敗します。
だから大事なのが「優先順位」
- 毎日起きるミス
- クレームにつながる行動
- 利益に影響する行動
こうした“影響が大きいもの”に絞るほうが、現場の改善スピードは確実に上がります。
「誰が・どの場面で・どんな行動に困っているか」を見るだけで、課題整理は驚くほど精度が上がりますよ!
9章|すぐ使える“課題整理シート”まとめ
課題整理は、頭の中だけで考えていると、どうしても漏れやズレが出やすくなってしまいます。
そこで役に立つのが、研修担当者がどんな現場でも使える「課題整理シート」です。
このシートを使うと、
- 困りごとの背景
- 起きている場面
- 足りていない行動
- 優先順位
- 研修内容
- 成果の基準
が一枚で整理でき、研修企画の“迷い”が一気になくなります。
最後の章では、この「課題整理シート」の書き方や見方を、もう少し丁寧に解説していきます。
どこをどう埋めればよいのか、実務で迷わないレベルまで細かく見ていきましょう!
課題整理シートの項目(すべての意味つき)
① 困りごと
現場で起きている問題や、リーダーが“モヤっと”感じている悩み。
② 場面
その困りごとが“どの場面で起きているか”。
(例:来客対応/資料作成/朝礼/電話 など)
③ 足りない行動
その場面で、具体的にどんな行動が不足しているのか。
(例:確認をせずに進める/相談の基準がない など)
④ 優先度
「影響の大きさ × 発生頻度」で選ぶ、取り組む順番。
⑤ 研修テーマ
不足している行動を改善するために、研修で扱う内容。
⑥ 評価指標(改善の目安)
研修後、どこができていれば“改善した”と言えるかの基準。
完成イメージ(1行サンプル)
| 困りごと | 場面 | 足りない行動 | 優先度 | 研修テーマ | 評価指標 |
|---|---|---|---|---|---|
| 報告が遅れる | 作業の迷いが出た時 | 相談の基準が不明 | 高 | 相談タイミングの基準づくり | 迷いが出たら5分以内に相談 |
この1行だけでも、
「現場の課題 → 研修内容 → 成果」 が一本の流れでつながっているのがイメージできるはずです。
どんな場面で使える?
このシートは、
- 研修企画
- OJT設計
- 改善会議
- 部署ごとのヒアリング
- 年間教育計画の作成
など、あらゆる場面で役に立ちます。
「なんとなく困っている」を
“行動レベルで整理された課題” に変えていくための、実務ツールです。
【まとめ】課題整理は「行動レベル」で見れば迷わない
- 抽象語のまま研修を作るとズレる
- 行動まで落とせば研修テーマは自然に決まる
- ヒアリングと分類のコツを押さえれば、誰でも質の高い研修を作れる
- 研修後の行動変化までつなげると“成果が出る研修”になる
行動レベルで課題を見られるようになると、研修づくりは本当にシンプルになります。
今日からできる小さな一歩を積み重ねて、現場にとって“役に立つ研修”を一緒に作っていきましょう。
関連記事
研修をもっと“伝わる形”にしたい方へ
研修を“行動レベル”で考えると内容が伝わりやすくなりますが、
中には 文字だけではイメージしづらい行動 もあります。
そんな部分は、動画で見える形にすると理解と定着が一気に進みます。
- 手順の流れ
- お客様対応の声かけ
- 注意点の多い作業ポイント
こうした内容は、アニメーションにすると誰が見ても同じ理解になり、
OJTのバラつきも減らせます。
「うちの研修も、もっとわかりやすくできるかも…」
そう感じた方は、ぜひサンプルを見てみてください。
あなたの業務に合わせて、“伝わる形”を一緒につくることも可能です。
例えば難しいIT関連の研修でも下記のサンプルのようにわかりやすく制作可能です。
「うちの研修も、もっと“伝わりやすく”できるかも…」
そんなふうに少しでも感じたら、どうぞ気軽にご相談ください。
小さな工夫でも、研修のわかりやすさや現場での定着が大きく変わります