私が営業会社で働いていたころ、外部講師を招いた研修を受けたことがあります。
有名企業での登壇実績を持つ、いわゆる「実績十分」の講師です。
話はおもしろく、会場の空気もとてもよかった。
研修が終わったあと、私の仲の良かった同期と先輩もやる気が上がり、その夜は食事とお酒を飲みながら今後の目標など熱く話していました。
ところが、その一週間後です。
研修で聞いた内容を現場で実践している人は、ほとんどいませんでした。
わたし自身もそうです。
研修中は納得していたはずなのに、翌週の月曜日には、いつもと同じやり方に戻っていました。
当時の私は「自分は意識が低いからだ」と思っていました。
しかし研修設計を仕事にするようになってから、あの研修が現場で活きなかった本当の理由がわかってきました。
講師の質が低かったわけではありません。
問題は、研修を依頼する前の「設計の空白」にありました。
何を変えたい研修なのか。
受講者に、翌週どんな行動を取ってほしいのか。
その言語化がないまま、講師の力量だけに委ねてしまっていたのです。
外部講師選びで失敗する原因は、講師本人ではありません。
依頼する側が、目的と役割を決めないまま任せてしまうこと。
ここに、失敗のほとんどが集中しています。
この記事では、外部講師を「受けた側」と「設計する側」の両方を経験した立場から、次の3点を整理します。
- なぜ外部講師選びは失敗しやすいのか、その構造
- 依頼する前に担当者が言語化しておくべきこと
- 失敗しない選び方と、探し方・費用の見方
中小企業で、研修の専任担当ではないまま講師選びを任された。
そういう方に向けて、現場目線で解説します。
なぜ外部講師選びは失敗するのか|「講師の質」ではなく「設計の空白」

外部講師選びの失敗と聞くと、多くの方が「講師選びをミスした」と考えます。
しかし、研修設計を仕事にしてきた立場から見ると、失敗の原因は講師本人よりも手前にあることがほとんどです。
ここでは、なぜ外部講師選びが失敗しやすいのか、その構造から整理します。
中小企業の担当者が抱える「3つの手探り」
外部講師を探すといっても、研修担当者の多くは手探りの状態に置かれます。
特に中小企業では、研修を専門に扱う担当者がいないことも珍しくありません。
具体的には、次の3つに悩む担当者が多く見られます。
どんな基準で講師を選べばいいか、判断のものさしがない。
費用の相場がわからず、提示された金額が妥当なのか判断できない。
研修が失敗したときの責任を、自分一人で負うように感じてしまう。
「前例がない」「社内に相談できる人がいない」という状態で、担当者は講師を決めなければなりません。
その結果、明確な基準を持てないまま、肩書きや料金といったわかりやすい情報だけで講師を選んでしまいます。
「プロに任せれば大丈夫」という誤解
手探りの担当者ほど、頼りたくなる気持ちはわかります。
「実績のあるプロに任せれば、いい研修になるはずだ」という考えです。
この考えは半分は正しいのですが、残りの半分には落とし穴があります。
外部講師は、研修当日の進行や、専門知識をわかりやすく伝えることには長けています。
しかし、講師が把握できる情報には限界があります。
例えば、
- 自社の現場で、いま何が起きているのか
- 受講者一人ひとりのレベルの差
- 上司や経営層が、その研修に何を期待しているのか
こうした情報は、依頼する側が言語化して渡さない限り、講師には見えません。
渡されないまま研修を任せてしまうと、「話はよかったけれど、現場では活かされない研修」になりやすいのです。
わたしが営業会社で受けた研修も、まさにそうでした。
失敗は「講師」ではなく「設計の空白」から生まれる
ここまでを整理すると、研修が失敗する原因が見えてきます。
“担当者”は基準を持てないまま講師を選び、“講師”は現場の情報を渡されないまま研修を組み立てる。
この両者のあいだに生まれる情報の空白こそが、失敗の温床です。
この記事では、この状態を「設計の空白」と呼んでおきましょう。
設計の空白とは、「本来なら講師に依頼する前に決めておくべき次の3つが、決まらないまま研修が進んでしまう状態」のことです。
- この研修で、現場の何を変えたいのか(研修の目的)
- 受講者に、研修後どんな行動を取ってほしいのか(ゴールとなる行動)
- どこまでを講師に任せ、どこからを担当者が担うのか(役割分担)
この3つが空白のまま講師に丸投げされると、講師がどれだけ優秀でも研修は現場からずれていきます。
私が営業会社で受けた研修も、いま思えばこの3つがすべて空白でした。
「実施すること自体が目的になった研修」とも言えます。
何を変えたい研修なのか、翌週どう行動を変えればいいのか、誰も言語化しないまま当日を迎えていたのです。
逆に言えば、講師の質を上げるより先に、この3つの空白を埋めるほうが、研修の成否を大きく左右します。
だからこそ、講師を探し始める前に、依頼する側が何を準備すべきかを知っておく必要があります。
次の章では、設計の空白が具体的にどのような失敗となって現れるのかを、3つの構造に分けて見ていきます。
設計する側から見た、失敗の3つの構造

前の章で、設計の空白とは「目的」「ゴールとなる行動」「役割分担」の3つが決まらないまま研修が進む状態だとお伝えしました。
この3つの空白は、それぞれ違った形の失敗となって現れます。
ここでは、研修を設計する側から見たときに、空白がどんな失敗として表面化するのかを整理します。
構造① 目的の空白|肩書きと実績だけで選んでしまう
研修の目的が言語化されていないと、担当者は講師を選ぶものさしを持てません。
ものさしがないまま選ぼうとすると、頼れるのは目に見える情報だけになります。
その結果、多くの担当者が肩書きや実績頼りになります。
講師のホームページやSNSには、次のような言葉が並んでいます。
「有名企業での登壇実績あり」
「書籍出版経験あり」
「登壇回数◯◯◯回以上」
こうした実績は、たしかに魅力的に見えます。
しかし、実績が豊富であることと、自社の課題に合っていることは別の話です。
大企業向けの研修で評価されてきた講師が、中小企業の現場にそのままフィットするとは限りません。
それは印象論では「有名な講師のほうが安心では」と思われるかもしれません。
ですが、大企業と中小企業では、組織の規模も、一人の社員が担う役割の幅も、現場で求められる判断の種類も大きく異なります。
内容そのものは正しくても、「自社の現場で、明日どう動けばいいのか」が見えない研修になりやすいのです。
目的という自社側のものさしがあって初めて、講師の実績が「自社に合っているか」で判断できるようになります。
順序が逆になると、実績の派手さに引っ張られてしまいます。
構造② 行動の空白|「意識づけ」で終わってしまう
2つめは、受講者に取ってほしい行動、つまりゴールが決まっていない状態です。
“目的”と“ゴール”は混同されやすいので、ここで一度整理します。
次の2つのうち、研修の「ゴール」はどちらでしょうか。
A:営業の成約率を上げたい
B:商談のあと、振り返りをする人を増やしたい
正解はBです。
Aは「なぜ研修をやるのか→営業の成約率を上げたいから」という目的にあたります。
大切な方向性ではありますが、受講者が明日から何をすればいいのかは示していません。
一方のBは、研修後に現場で起きてほしい具体的な行動を指しています。
振り返りをしているかどうかは、あとから確認することもできます。
Aだけを講師に伝えて依頼すると、「成約率を上げるための良い話」で研修が終わってしまいます。
Bまで言語化して初めて、講師は「振り返りが習慣になる研修」を設計できます。
ここが空白のまま依頼されるケースは、とても多く見られます。
研修を依頼するとき、講師に伝える言葉は「意識づけをしたい」「理解を深めてほしい」といった曖昧な要望になりがちです。
研修の入り口としては自然な言葉ですが、これだけでは研修のゴールになりません。
ゴールとなる行動が空白のままだと、講師は内容を設計しきれません。
次の問いに答えが用意されていないからです。
研修後、受講者に具体的にどんな行動を取ってほしいのか
「できるようになった」と判断できる状態は、どこなのか
その行動が変わったことを、誰がどうやって確認するのか
わたしが営業会社で受けた研修も、まさにこのゴールの空白のなかにありました。
「意識を高める」がゴールだったため、研修当日は意識が高まります。
同期や先輩とお酒を飲みながら目標を語り合ったあの夜が、その証拠です。
しかし翌週、何を変えればいいのかは誰も言語化していませんでした。
だから月曜日には元のやり方に戻ったのです。
意識というのは、放っておけば数日で元に戻ります。
行動として定義されていないゴールは、定着しません。
ここが空白のまま依頼された研修は、講師がどれだけ熱量を持っていても、一過性の盛り上がりで終わってしまいます。
構造③ 役割の空白|すべてを講師に丸投げしてしまう
3つめは、講師と担当者の役割分担が決まっていない状態です。
「プロに任せれば大丈夫」という発想の裏側で、実際には最も失敗につながりやすい空白です。
失敗しない研修では、講師と担当者の担当範囲がはっきり分かれています。
それぞれが担うべきものは、本来こう分かれています。
- 講師が担うもの
-
専門知識の整理、研修当日の進行、内容をわかりやすく伝える工夫
- 担当者が担うもの
-
現場で起きている具体的な課題の共有、研修の背景や目的の説明、上司や現場との事前調整
ところがこの役割が空白のままだと、担当者は「専門家である講師がすべてやってくれる」と考え、講師は「現場のことは依頼元がわかっているはず」と考えます。
両者が相手に期待した結果、現場の課題を誰も研修に持ち込まないまま当日を迎えます。
具体的な発注の場面で言えば、次のような違いです。
- NGな発注
-
「若手の育成について、いい感じにお願いします」
- OKな発注
-
「入社2年目までの営業に、商談後の振り返りを習慣化してほしい。現場では振り返りをせず次の訪問に移る人が多いので、その行動を変えたい」
前者は役割も目的も講師に丸投げしています。
後者は、現場の課題と変えたい行動という担当者にしか持てない情報を、きちんと引き渡しています。
この差が、同じ講師でも研修の成果を分けます。
3つの空白は、講師を探す前に埋められる
ここまで見てきた3つの構造は、いずれも講師の能力とは無関係です。
目的、行動、役割分担。
この3つの空白は、講師を探し始めるより前に、担当者の側で埋めておけるものです。
逆に言えば、空白を埋めないまま「いい講師さえ見つかれば」と探し続けても、失敗の構造は変わりません。
次の章では、講師を探す前に担当者が具体的に何を言語化しておけばいいのかを整理します。
外部講師を選ぶ前に、担当者が言語化すべき3つのこと

ここまで、外部講師選びの失敗が「目的」「ゴールとなる行動」「役割分担」の3つの空白から生まれることを見てきました。
裏を返せば、この3つを講師に依頼する前に言語化しておけば失敗の大半は防げると思います。
しかも、この作業に特別な専門知識は必要ありません。
ここでは、担当者が講師を探し始める前に埋めておきたい3つを、順番に整理します。
① 目的|この研修で、現場の何を変えたいのか
はじめに言語化したいのは、研修の「目的」です。
「なぜ、いま、この研修をやるのか」を一文で言い切れる状態を目指します。
ここでのポイントは、社内の課題から出発すること。
「マナー研修をやりたい」ではなく、「電話応対で顧客からのクレームが増えているので、それを減らしたい」というように、現場で起きている困りごとを出発点にします。
困りごとが出発点になっていれば、研修が現場からずれにくくなります。
目的を言葉にするときは、次の問いが役立ちます。
- いま、現場でどんな困りごとが起きているのか
- その困りごとを放置すると、どんな影響が出るのか
- 研修で、その状況をどう変えたいのか
この3つに答えられれば、目的は十分に言語化できています。
逆に言語化が曖昧なら、それは研修そのものが必要かどうかを含めて、もう一度整理し直す余地があるサインです。
② ゴールとなる行動|研修後、受講者に何をしてほしいのか
次に言語化したいのは、ゴールとなる行動です。
先ほどの例で言えば、「営業の成約率を上げたい」が目的、「商談のあと、振り返りをする人を増やす」がゴールにあたります。
目的が研修をやる理由だとすれば、ゴールは研修後に受講者が現場で取る行動のことです。
ここでのコツは、目に見える行動で表すことです。
「意識が高まる」「理解が深まる」は、外からは確認できません。
確認できる行動に置き換えます。
:報連相の意識を高める
:トラブルが起きたとき、30分以内に上司へ第一報を入れる
:顧客対応の理解を深める
:クレームを受けたら、まず事実確認をしてから謝罪の言葉を選ぶ
NG()の表現は気持ちの話なので、変わったかどうかを誰も判定できません。
OK()の場合、実際にその行動を取っているかを、あとから確認できます。
ゴールをこの粒度まで具体化しておくと、講師は「その行動が身につく研修」を設計できるようになります。
③ 役割分担|どこまでを講師に任せ、どこからを担当者が担うのか
最後に決めておきたいのが、講師と担当者の役割分担です。
ここが曖昧なまま進むと、現場の課題を誰も研修に持ち込まないまま研修当日を迎えることになります。
これはあまりにももったいない。
だからこそ、役割分担はしっかり整理しておきましょう。
役割の目安は、次のように整理できます。
この境界を、依頼の段階ではっきりさせておきます。
- 講師に任せること
-
専門知識の整理、研修プログラムの設計、当日の進行、内容をわかりやすく伝える工夫
- 担当者が担うこと
-
現場の課題の共有、目的とゴールの説明、受講者のレベル感の伝達、上司や現場との事前調整
特に見落とされやすいのが、担当者側の「現場の課題の共有」です。
ここを講師にしっかり渡せるかどうかで、研修が現場に寄るか、一般論で終わるかが分かれます。
必ず、講師にすべてを丸投げするのではなく、担当者にしか持てない情報を渡す。
この意識が、役割の空白を埋めてくれるのです。
3つが言語化できたら、依頼書に一枚でまとめる
目的、ゴールとなる行動、役割分担。
この3つが言葉になったら、A4一枚の紙にまとめておくことをおすすめします。
もちろん紙でなくても、データでも構いません。
大切なのは、要点が一目で見渡せる分量に収めておくこと。
そのメモが講師を探すときの判断基準になり、複数の講師を比べるときのものさしにもなります。
- この研修の目的(現場のどんな困りごとを変えたいのか)
- ゴールとなる行動(研修後、受講者に取ってほしい具体的な行動)
- 講師に任せたいこと/担当者が担うこと
- 受講者の人数・役職・レベル感
- 研修の希望時期と、想定している予算感
このメモがあると、次の章で紹介するチェックポイントが格段に使いやすくなります。
まずは、ここまでの内容を簡単に書き出すところから始めてみてください。
失敗しない外部講師の選び方|5つのチェックポイント

あなたの会社の要件を言葉にできたら、いよいよ講師を見極める段階です。
とはいえ、講師の良し悪しを見抜く特別なスキルなんてものは必要ありません。
前の章で固めた「目的」「ゴール」「役割分担」を、講師が一緒に扱ってくれるかどうか。
この部分を注意して見れば、講師選びが失敗する確率はグッと減らせます。
ここでは、担当者が最低限確認しておきたい5つのチェックポイントを、講師への質問例とあわせて紹介します。
① 研修のゴールを一緒に言語化してくれるか
良い講師ほど、打ち合わせの早い段階で研修のゴールを一緒に整理しようとしてくれます。
「この内容でやります」と一方的に進めるのではなく、あなたの目的を確認しながら内容を組み立ててくれる。
見極めたいのは、次のような問いを講師の側から投げかけてくれるかどうかです。
- この研修で、現場の何を変えたいですか?
- 研修後、受講者にどんな行動を取ってほしいですか?
- 「できるようになった」と判断できる状態は、どこですか?
もちろん、この問いを投げかけない講師はやめておいた方がいいと言いたいわけではありません。
講師によって考えや信念が違えば、違う質問になるかもしれません。
しかし、要件を渡しても掘り下げず、自分の持ちネタをそのまま提案してくる講師は、注意したほうがよいかもしれません。
こちらが用意した要件を伝えたとき、それを深掘りしてくれる講師なら安心です。
自社の現場を理解しようとしているか
講師が現場を理解しようとする姿勢は、研修が自社の現場に寄り添ったものになるかどうかを大きく左右します。
ヒアリングの深さは、そのまま研修内容の解像度につながります。
打ち合わせのとき、講師が次のような質問をしてくるかどうかを見てみてください。
- 受講者の人数、役職、経験年数はどのくらいか
- 受講者のあいだにレベルの差はあるか
- その業界や職種に特有の事情はあるか
- 過去に似た研修を実施したことはあるか
こうした質問が自然に出てくる講師は、研修内容を自社の現場に合わせて考えてくれる可能性が高いと思います。
現場を知ろうとしないまま、講師自身の経験や知識・内容で確定させようとする講師は一般論の研修になりがちです。
③ 講師と担当者の役割を整理してくれるか
失敗しない研修では、講師と担当者の役割がはっきり分かれています。
専門知識と当日の進行は講師が、現場の情報や社内調整は担当者が担う。
良い講師は、この役割分担を打ち合わせの段階で一緒に整理しようとしてくれます。
具体的には、次のようなすり合わせをしてくれるかどうかです。
- どこまでを講師が担い、どこからを担当者が担うのか
- 現場の課題やゴールを、誰がどう共有するのか
- 研修前に、担当者側で準備しておくことは何か
「すべてこちらにお任せください」と役割の線引きをしない講師は一見頼もしく見えます。
しかし、担当者のあなたにしかわからない現場の情報が研修に反映されないまま進むおそれがあります。
役割を一緒に整理してくれる講師のほうが、結果として研修は現場にしっかり届きます。
④ 研修後のフォローまで見据えているか
研修は、当日で終わりではありません。
もっとも大切なのは、研修後に受講者の行動がどう変わったかです。
そこまで視野に入れている講師は、成果を意識して設計してくれます。
打ち合わせで、次のような話題が講師から出てくるかを見てみてください。
- 研修内容を、現場で実践できているかをどう確認するか
- 以前と比べて、行動に変化があったかをどう測るか
- フォローのために、研修後に何ができるか
「いつ・誰が・どうやって行動を確認するか」まで話に出る講師は、研修を「やって終わり」にしません。
反対に当日の内容の話しかしない講師の場合、フォローの設計を担当者である、あなた側で補う必要が出てきます。
⑤ 価格の理由を具体的に説明できるか
金額について質問したとき、その価格で何をどこまで対応してもらえるのかを具体的に説明できる講師は、安心して依頼できます。
価格の内訳が明確なほど、あとから「思っていた内容と違った」というずれが起きにくくなります。
次の点を質問し、はっきり答えてもらえるかを確認します。
- 事前の打ち合わせは、何回まで含まれているのか
- 研修内容のカスタマイズは、どこまで対応してもらえるのか
- 資料の作成や修正は、費用に含まれるのか
- 研修後のフォローは、料金の範囲に入っているのか
こうした点を、作業量や準備の工数とあわせて説明できる講師なら、価格と提供内容の認識がずれにくくなります。
逆に、価格の根拠が曖昧なまま進めると、想定していなかった追加費用や作業が発生し、担当者の負担が増えることがあります。
費用の考え方については、次の章でくわしく整理します。
5つに共通するのは「一緒に設計してくれるか」
ここまでの5つを振り返ると、共通点が見えてきます。
いずれも「講師が一人で完結させようとするか、担当者と一緒に設計しようとするか」を見ている点です。
肩書きや実績は、あくまで判断材料の一つにすぎません。
本当に見るべきなのは、こちらが用意した目的・ゴール・役割分担を一緒に扱い、研修を現場に届けようとしてくれるかどうかです。
もっと簡単に言ってしまえば「あなたの会社の問題を本気で解決しようとしてくれているかどうか」です。
この姿勢を持つ講師を選べれば、外部講師選びで大きく失敗することは少なくなります。
外部講師の費用相場と、金額の見方

外部講師を検討するとき、費用は多くの担当者が気にする判断材料の一つです。
しかし、外部研修の費用には決まった定価がなく、同じ「1日研修」でも金額に大きな幅が出ます。
だからこそ、相場の数字を探すより、「なぜ金額に幅が出るのか」を理解しておくほうが役に立ちます。
ここでは、費用の考え方と、金額を見極める視点を整理します。
なぜ外部講師の費用には大きな幅があるのか
外部講師の費用が一律にならないのは、料金が「講師が登壇する時間の長さ」だけで決まっていないからです。
同じ登壇時間でも、その前後にどれだけの準備やフォローが含まれるかで、金額は大きく変わります。
費用に幅を生む主な要素は、次のとおりです。
- 講師の実績や専門性(登壇料そのものの水準)
- 事前の打ち合わせやヒアリングの回数
- 研修内容を自社向けにどこまでカスタマイズするか
- 資料やワークシートを新たに作成するかどうか
- 研修後のフォローや効果測定を含むかどうか
- 半日か、1日か、複数回にわたるか
つまり、提示された金額は「講師の格」だけを表しているわけではありません。
準備やカスタマイズ、フォローといった手間の総量が、金額に反映されています。
ここを理解しておくと、次に説明する「金額の見方」がわかりやすくなります。
「高い・安い」ではなく「何が含まれているか」で見る
費用を判断するとき、避けたいのは「高いから安心」「安いからお得」という見方です。
前の章の価格チェックでも触れたとおり、大切なのは金額そのものではなく、その金額に何が含まれているかです。
たとえば、次の2つの見積もりがあったとします。
- A社:登壇のみ。事前打ち合わせ1回、資料は既製のものを使用
- B社:事前ヒアリング2回、自社向けに資料を作成、研修後にフォロー面談あり
仮にB社のほうが高くても、それは「割高」とは限りません。
理由はカスタマイズやフォローという手間が価格に含まれているからです。
反対に、A社の安さが自社に合うこともあります。
既に社内で研修の骨格が固まっていて、登壇だけを頼みたいケースなどです。
見積もりを比べるときは、金額の数字だけを並べても意味がありません。
同じ条件で、何が含まれ、何が別料金なのかをそろえて比較することが大切です。
見積もりを取るときに確認したいこと
金額の認識をそろえるために、見積もりの段階で確認しておきたい点があります。
ここが曖昧なまま契約すると、あとから追加費用が発生しやすくなります。
- 提示された金額に、事前打ち合わせは何回まで含まれるか
- 資料の作成・修正は、費用に含まれるか、別料金か
- 研修内容のカスタマイズは、どこまでが基本料金の範囲か
- 交通費や宿泊費は、金額に含まれるか、別途か
- 研修後のフォローを頼む場合、追加でいくらかかるか
これらを見積もりの段階で確認しておくと、「思っていた金額と違った」というずれを防げます。
特に、資料作成とカスタマイズの範囲は、講師によって扱いが大きく異なるため、必ず確認しておきたい点です。
費用は「研修設計への投資」として考える
最後に、費用を考えるうえでの視点をひとつお伝えします。
外部研修の費用は、当日の登壇に対する支払いではなく、現場の行動を変えるための投資として捉えると、判断がぶれにくくなります。
どれだけ安く研修を実施できても、現場で行動が変わらなければ、その費用は成果につながりません。
反対に、多少費用がかかっても、受講者の行動が変わり、現場の困りごとが解消されれば、その研修は十分に元が取れています。
金額の大小だけで判断せず、「この費用で、現場の何が変わるのか」という視点を持つこと。
この見方ができると、費用は単なるコストではなく、成果を生むための投資として位置づけられます。
外部講師の探し方|4つの方法と向き・不向き

講師を見極める視点が定まったら、次は「どこで講師を探すか」です。
外部講師の探し方に、唯一の正解はありません。
大切なのは、自社の状況と研修の目的に合った方法を選ぶことです。
ここでは、研修担当者がよく使う4つの探し方を、それぞれの特徴と向き・不向きとあわせて整理します。
① 講師派遣会社を利用する
講師派遣会社は、条件を伝えると、それに合った講師を紹介してくれるサービスです。
研修テーマや予算、日程を伝えれば、候補を絞り込んでもらえます。
派遣会社を使う特徴は、次のとおりです。
- 向いている場合
-
候補を効率よく比較したい、社内に講師のツテがない、日程や条件を優先して探したい
- 注意したい点
-
派遣会社が間に入るため、講師本人と事前にすり合わせる機会が少なくなりがち
派遣会社経由で依頼する場合でも、契約前に講師本人と打ち合わせの時間を取れるかを確認しておくと安心です。
前の章で見たチェックポイントは、講師本人と話せて初めて確認できるものだからです。
② 知人・他社からの紹介
実際に研修を受けた人からの紹介は、安心感があります。
「あの講師はよかった」という実体験に基づく情報は、ホームページの実績よりも信頼しやすいものです。
ただし、紹介には注意点もあります。
- 向いている場合
-
信頼できる相手からの評価を重視したい、失敗のリスクを抑えたい
- 注意したい点
-
他社でうまくいった研修が、自社でも合うとは限らない
紹介を受けたときは、「どんな課題に対して効果があったのか」「どんな受講者を想定した研修だったのか」を確認しておくとよいでしょう。
自社の目的やゴールと照らし合わせて、合うかどうかを見極めることが大切です。
③ Web検索・SNSで探す
インターネットで検索したり、SNSで発信を見たりして探す方法です。
選択肢が最も広く、講師の発信内容から人柄や考え方も見えてきます。
一方で、情報の見極めが必要になります。
- 向いている場合
-
幅広い候補から探したい、講師の考え方や発信内容を見て選びたい
- 注意したい点
-
情報量が多く、質の見極めを自分でする必要がある
見極めのポイントは、発信内容に一貫性があるか、研修実績が具体的に書かれているかです。
華やかな肩書きや抽象的なPRだけで判断せず、その講師が何をどう考えているのかが伝わる発信かどうかを見てみてください。
④ 既存の取引先・制作会社経由
すでに取引のあるパートナーや制作会社から、研修設計を相談する方法です。
自社の業務や課題をある程度理解している相手なら、研修の設計段階から相談できることがあります。
この方法の特徴は、次のとおりです。
- 向いている場合
-
単発の研修ではなく、研修全体の流れや定着まで見据えたい、自社を理解した相手に相談したい
- 注意したい点
-
研修の実績や講師としての専門性は、あらためて確認する必要がある
すでに自社を理解している相手であれば、この記事で見てきた「目的」「ゴール」「役割分担」の言語化から一緒に取り組めることもあります。
研修を単発で終わらせず、現場への定着まで見据えたい場合には、相性の良い方法です。
探し方は「自社が要件を固めているか」で選ぶ
ここでは4つの方法を見てきましたが、どれが最適かは、自社の状況によって変わります。
判断の目安になるのは、「自社の要件がどこまで固まっているか」です。
- 要件が固まっていて、条件に合う講師を効率よく探したい場合
-
派遣会社やWeb検索が向いている。
- 要件の言語化から一緒に相談したい場合
-
自社を理解した取引先・制作会社経由が向いている。
どの方法を選ぶ場合でも、自社の目的とゴールを持ったうえで探すことに変わりはありません。
要件というものさしがあれば、どの探し方でも、講師を正しく見極められます。
依頼から実施までの流れと、契約前チェックシート

講師の探し方まで決まったら、あとは実際に依頼を進めるだけです。
とはいえ、外部研修を依頼した経験がないと、どんな順番で何を進めればいいのかがわかりにくいものです。
最後は、問い合わせから研修後のフォローまでの流れを5つのステップで整理し、最後に契約前の確認リストをまとめます。
ステップ1|問い合わせ・相談
気になる講師が見つかったら、まず問い合わせます。
この段階で、あらかじめ言語化しておいた「目的」「ゴールとなる行動」「役割分担」を伝えることができれば、その後のやり取りがスムーズになります。
完璧な状態でなくてかまいません。
「現場でこんな困りごとがあり、こう変えたい」という要件が言葉になっていれば、講師も具体的な提案をしやすくなります。
ここで、講師がこちらの状況を丁寧に聞こうとするかどうかも、見極めの材料になります。
費用に関しても問い合わせ段階で聞いておくといいでしょう。
ステップ2|打ち合わせ・ヒアリング
次に、講師との打ち合わせに進みます。
研修の成否は、この打ち合わせでどれだけ現場の情報をすり合わせられるかにかかっていると言っても、大げさではありません。
この場では、担当者のあなたにしか持てない情報を講師に渡します。
現場で起きている課題、受講者の人数やレベル感、上司や経営層が期待していること。
あわせて、講師と担当者の役割分担も、ここで具体的にすり合わせておきます。
打ち合わせが1回で足りるか、複数回必要かは、研修の規模によって変わります。
ステップ3|内容の設計・すり合わせ
打ち合わせの内容をもとに、講師が研修プログラムを設計します。
担当者は、上がってきた内容が当初の目的やゴールに沿っているかを確認します。
ここで確認したいのは、研修の内容が「現場の行動を変える」ところまで踏み込めているかです。
知識を伝えるだけの内容になっていないか、受講者が翌日から何をすればいいのかが見える設計になっているか。
気になる点があれば、この段階で遠慮なく伝え、一緒に調整していきます。
ステップ4|研修の実施
設計が固まったら、研修当日を迎えます。
講師が進行を担い、担当者は受講者の様子や反応を見ておきます。
当日は講師に任せる場面が多くなりますが、担当者にも役割があります。
受講者がどこで反応し、どこで戸惑っていたか。
こうした様子は、研修後のフォローや、次回以降の研修設計に役立ちます。
可能であれば、気づいた点をメモしておくとよいでしょう。
ステップ5|研修後のフォロー
研修は、当日で終わりではありません。
むしろ、受講者の行動が変わるかどうかは、研修後の関わり方にかかっています。
研修で決めたゴールとなる行動が、現場で実践されているかを確認します。
「商談後の振り返りをしているか」「トラブル時に第一報を入れているか」など、あらかじめ定義した行動を目安に見ていきます。
講師によるフォロー面談があれば、それも活用します。
行動が定着していない場合は、何が妨げになっているかを振り返り、次の一手を考えます。
契約前に確認したいチェックシート
ここまでの流れを踏まえ、契約を結ぶ前に確認しておきたい点をまとめます。
依頼を決める前に、次の項目に答えられる状態かを見直してみてください。
自社側の準備として、次の3点が言葉になっているかを確認します。
- 研修の目的(現場のどんな困りごとを変えたいのか)が言語化できているか
- ゴールとなる行動(研修後に受講者に取ってほしい行動)が具体的に決まっているか
- 講師に任せることと、担当者が担うことの線引きができているか
講師・契約面では、次の点を確認します。
- 契約前に、講師本人と打ち合わせができているか
- 事前打ち合わせの回数や、資料作成の範囲が明確になっているか
- カスタマイズやフォローの範囲、追加費用の有無を確認できているか
- 交通費・宿泊費などの扱いが、見積もりに明記されているか
これらにひととおり答えられる状態であれば、大きな失敗は避けられると思います。
逆に、答えに詰まる項目があれば、そこが設計の空白になりやすい箇所です。
契約を急がず、その空白を埋めてから進めることをおすすめします。
良い講師でも成果が出ないケース|結局は「設計」に戻る

ここまで、講師の選び方や探し方を見てきました。
しかし最後に、どうしてもお伝えしておきたいことがあります。
評価の高い講師に依頼しても、研修の成果が出ないケースは、実際に起こる
ということです。
そして、その原因の多くは、講師ではなく依頼する側にあります。
講師の評価と、研修の成果は別物
経験豊富で評判の良い講師に頼んだのに、いまいち効果がなかった。
こうした相談は、私のとこでも何度かありました。
講師の力量は十分なのに、成果につながらない。
この食い違いには、はっきりした理由があります。
研修が成果につながらないとき、原因の多くは次の3つに集まります。
- 事前の情報共有が足りず、講師が現場を把握しきれなかった
- ゴールとなる行動が曖昧で、何をもって成功とするかが決まっていなかった
- 研修後のフォローがなく、変わりかけた行動が元に戻ってしまった
どれも、講師の能力とは関係のないところで起きています。
優秀な講師であっても、渡される情報が足りなければ、現場に合った研修は設計できません。
成果を分けるのは、講師の格ではなく、依頼する側がどれだけ設計に関わったかなのです。
わたしが受けた研修も、そうだった
この記事の冒頭で、営業会社で受けた研修の話をしました。
実績十分の講師で、話もおもしろく、当日は同期も先輩も、やる気に満ちていました。
それでも、一週間後には誰も実践していませんでした。
いま振り返れば、あの研修には目的もゴールも役割分担もありませんでした。
何を変えたい研修なのか、翌週から何をすればいいのか、誰も言葉にしていなかったのです。
講師は与えられた枠のなかで、できることを精一杯やっていました。
空白を作っていたのは、講師ではなく、依頼する側でした。
だからこそ、声を大にしてお伝えします。
研修の成果は、講師だけで決まるものではありません。
依頼する側の関わり方が、成果を大きく左右します。
成果につなげるために、担当者ができる3つのこと
では、同じ講師に依頼しても成果を出すために、担当者は何をすればいいのか。
やることは、この記事で見てきたとおり、シンプルです。
- 研修の目的と背景を言語化し、講師に共有する
- 現場のリアルな課題と、ゴールとなる行動を伝える
- 研修後に、行動が変わったかを確認する段取りを決めておく
この3つがあるだけで、同じ講師でも研修の成果は大きく変わります。
特別なスキルはいりません。
必要なのは、講師に任せきりにせず、依頼する側として設計に関わる姿勢だけです。
良い講師を探すことと同じくらい、この準備に力を注ぐ価値があります。
まとめ|外部講師選びは「研修設計」の一部
外部講師選びは、それ自体がゴールではありません。
研修を成功させ、現場の行動を変えるための、通過点のひとつです。
この記事の締めくくりとして、大切な考え方をもう一度整理します。
外部講師選びで失敗しないために、依頼する側が持っておきたい姿勢は、次の3つに集約されます。
- 講師に任せきりにせず、依頼する側も設計に関わる
- 研修の目的・ゴール・役割分担を、依頼の前に言語化する
- 当日で終わらせず、研修後の行動変化まで見据える
この3つを意識するだけで、外部講師選びの失敗は大きく減らせます。
逆に言えば、どれだけ実績のある講師を見つけても、この準備がなければ、研修は現場に届きにくくなります。
講師を探し始める前に、まずは自社の研修の目的とゴールを整理することから始めてみてください。
外部講師選びの成否は、講師と出会う前の準備で、その多くが決まっています。
良い講師を探すことと同じくらい、依頼する側の設計に、力を注いでみてください。



研修の目的とゴール、整理できていますか

この記事でくり返しお伝えしてきたとおり、外部講師選びの成否は、依頼する前の準備で大きく決まります。
とはいえ、いざ自社の研修を言葉にしようとすると、手が止まってしまう方は少なくありません。
- この研修で、現場の何を変えたいのか
- 受講者に、研修後どんな行動を取ってほしいのか
- どこまでを講師に任せ、どこからを自社で担うのか
こうした点が曖昧なまま講師を探し始めてしまい、「話はよかったけれど、現場は変わらなかった」という結果になるケースを、わたしは何度も見てきました。
テンツキでは、研修の目的やゴールを言葉にするところから、一緒に整理するお手伝いをしています。
まだ何をどうすればいいか決まっていない段階でも、まったく問題ありません。
「この研修、どう組み立てればいいんだろう」。そう感じたときが、見直しを始めるタイミングです。
30分の無料相談を用意しています。お気軽にご相談ください。
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