以前、こんなお問い合わせをいただきました。
建築会社で社内研修を担当しています。
現在、営業・事務・現場の連携に悩んでいます。
「事務の対応が遅い」「営業が勝手に話を進める」「現場に変更が伝わるのが遅い」という不満が、以前から社内で出ています。
特に、お客様から仕様変更や追加工事の相談があったときに、「聞いていない」「伝えたはず」というやり取りになり、部署同士で責任を押し付け合う状態です。
報連相の研修をしたり、早めに共有するよう伝えたり、話し合う場も設けました。
一時的には意識してもらえるのですが、しばらくすると同じことが起きます。
結論から言うと、この相談の問題を解決するには“チームビルディング”が必要なケースでした。
ただし、ここで言うチームビルディングは、みんなで集まって仲良くなるイベントのことではありません。
あとで詳しくお伝えしますが、「仕事が回る状態を設計し直す」という意味でのチームビルディングです。
私も過去に働いていた会社では、今回の相談ほど深刻ではありませんでしたが、身に覚えがあります。
そこで今回は、この相談を題材にしながら、同じように悩んでいる方の為に、チームビルディングが本当に必要なのかどうかを整理してみます。
チームビルディングは、すべての会社に必要な施策ではありません。
ただ、この相談のように、
- 部署間で責任を押し付け合う
- 報告や共有が遅れる
- 「聞いていない」「伝えたはず」が繰り返される
といった問題が繰り返されている場合は、人間関係だけではなく、チームとして仕事を進める仕組みそのものを見直したほうがよい可能性があります。
この記事では、この相談を題材にしながら、チームビルディングが「意味ない」と言われる理由、必要な会社の見分け方、そして中小企業でも低コストで始められる進め方まで整理していきます。
チームビルディングが「意味ない」と言われる3つの理由
チームビルディングという言葉に、あまり良い印象を持っていない方もいると思います。
私の友人が働いている会社では、飲み会やレクリエーション、ゲーム、合宿といったものが「チームビルディング」と呼ばれているようです。
しかも、参加が半ば強制される。
これでは、良い印象を持てないのも無理はありません。
ここに、そもそもの誤解があります。
こうしたイベントは、確かにチームビルディングの一部ではありますが、本質ではありません。
チームビルディングという言葉の認識がずれたまま「意味がある・ない」を語ってしまうと、“交流イベントの効果”と、“仕事の進め方を整える施策の効果”を混同してしまいます。
そのうえで、なぜチームビルディングは「意味ない」と言われてしまうのか。
理由を3つに整理します。
ここを押さえておくと、あとで「では何をすればいいのか」が見えやすくなります。
① イベントで終わるから
私が国内の研修に関する調査を確認した中でも、研修が「受けて終わり」になってしまっているケースは少なくないようです。[企業研修と研修効果に関する実態調査|株式会社EdWorks]
たとえば、半日から1日ほどのワークショップ型の研修。
グループワークで盛り上がり、お互いの強みを発表し合い、最後は前向きな感想を共有して終わる。
その日は「いい研修だった」と感じてもらえるかもしれません。
ただ、本当に大切なのは、そのあと仕事の進め方が変わるかどうかです。
つまり、研修そのものを実施しても、その後の仕事につなげる仕組みまで用意されているとは限りません。
たとえば、
- 翌週になっても、会議の進め方は以前と同じ。
- 誰が決定するのかもあいまいなまま。
- 報告するタイミングも決まっていない。
これでは、研修を受けた後で「もっと連携しよう」と感じても、現場では以前と同じ動き方に戻ってしまいます。
冒頭の建築会社の相談も、まさに似た状態でした。
報連相の研修を行い、早めの共有を呼びかけ、話し合う場も設けています。
それでも、「一時的には意識してもらえるが、しばらくすると元に戻る」という状態が続いていました。
ここで必要なのは、研修をもう一度行うことだけではありません。
お客様から仕様変更の相談があったら、決定前でも現場に共有する。
営業が変更を受けたら、事務と現場の両方に伝える。
費用や工期に影響する変更は、○○が確認してから進める。
といったように、実際の仕事で迷わないところまで決めておくことです。
チームビルディングを「その日のイベント」で終わらせないためには、ここまで考える必要があります。
②業績と結びつかないから
社長雰囲気は良くなった。でも、仕事はどう変わったんだ?
経営層が気にするのは、たいていここです。
- 営業と事務の連携ミスは減ったのか。
- 報告の遅れは改善したのか。
- クレームは減ったのか。
- 離職は止まったのか。
こうした具体的な変化と結びついていないと、チームビルディングは経営層からすれば、ただのコストとして見られてしまいます。
「仲良くなること」そのものが目的になってしまうと、成果との接点がなくなります。
関係が良くなること自体は悪くありません。
ただ、そこで止まっていると、経営層から業績の話をされたときに説明ができなくなってしまうのです。
③ 経営層が変わらないから
現場の空気は、管理職の言動に強く影響されます。
- 意見を言った社員に否定的な反応をする。
- 会議で結論をあいまいにする。
- 責任を部下に押しつける。
- ミスを人前で叱責する。
これらは、「自分の職場でもあった」と感じる方も多いのではないでしょうか。
私自身も、働いていた頃を振り返ると、思い当たることがいくつもあります。
こうした状態のまま、現場向けにだけチーム研修をしても、空気は変わりません。
特に中小企業では、社長や部長との距離が近く、その影響力はとても大きくなります。
上の姿勢が変わらないかぎり、現場だけがいくら意識しても「結局、いつもの会社」に戻ってしまいます。
あなたの会社にチームビルディングは必要か


ここまで、建築会社の相談を例に、問題の原因は人ではなく「仕事の進め方が決まっていないこと」にある、とお伝えしてきました。
では、あなたの会社ではどうでしょうか。
必要かどうかは、理論ではなく「現場で出ている症状」で判断します。
次の5つに心当たりがあるなら、設計を見直すタイミングかもしれません。
必要な会社に出る5つの症状
- ① 会議で結論が出ない
-
- 発言は多いのに決まらない。
- 「一度持ち帰ります」で終わる。
- 誰が最終判断するのかが、はっきりしていない。
- 同じ議題が何度も蒸し返される。
- ② 報告が遅れる
-
- 問題が小さいうちに共有されない。
- クレームが大きくなってから上に上がる。
- ミスを抱え込む。
- 「言いづらい」という理由で、報告そのものが止まってしまう。
- ③ 部門間で対立がある
-
- 営業は「事務が遅い」と言い、事務は「営業が勝手に決める」と言う。
冒頭の建築会社が、まさにこれでした。
こうした対立は、人の相性だけでなく、役割や情報の流れが整理されていないことが関係している場合もあります。 - ④ 責任があいまい
-
- 「それは誰の担当?」が日常会話になっている。
- 対応漏れが起きる。逆に二重対応も起きる。
- 最終的に誰が責任を持つのかが、決まっていない。
- ⑤ 新人が孤立する
-
- 教育担当はいるが、相談の流れが決まっていない。
- 質問する相手が固定されていない。
- 忙しそうで声をかけづらい。
これらは、個人の能力不足として片づけられることがよくあります。
ですが、多くは「仕事の進め方・役割分担・意思決定の仕組み」という、構造の問題です。
構造が整っていないかぎり、どれだけ優秀な人が入っても、同じ症状は繰り返されてしまいます。
【3分診断】あなたの会社をチェック
次の項目で、当てはまるものはいくつありますか?
3つ以上あれば、設計の見直しを検討するタイミングです。
- 会議で、誰が決めるのかが不明確
- 部門間で情報が止まる
- 問題の共有が遅い
- 引き継ぎのミスが多い
- 同じトラブルが繰り返される
- 役割の定義があいまい
- 上司への報告が、心理的に重い
- 新人の離職が早い
- 会議の時間が長い
- 「言いにくい」が口癖になっている
ただし、先に別の手を打つべき会社もある
一方で、チームビルディングが向かない状況もあります。
次のような状態のときは、先に整えるべきことが別にあります。
- 業務が完全に属人化している
- 評価制度への不満が集中している
- 人の入れ替わりが激しい
- 業務量が明らかに多すぎる
この状態でチームビルディングを行っても、根本原因が別のところにあるため、効果は出にくくなります。
まずは業務の整理や、制度の見直しが先です。
チームビルディングは、万能の解決策ではありません。
だからこそ、「やるかどうか」ではなく「いまの自社に必要な状態かどうか」で判断することが大切です。
何から手をつけるか


チームビルディングと聞くと、大がかりな研修や合宿を思い浮かべる人もいるかもしれません。
ですが、最初にやるべきなのは、日々の仕事の進め方を整えることです。
ここが変わらないと、どんな研修も一時的な効果で終わってしまいます。
まずは、次の4つから始めてみてください。
- 役割を明文化する
- 決定者を決める
- 報告のラインを引く
- 月に1回、振り返る
言葉にすると当たり前に見えます。
ですが、冒頭の建築会社は、この4つが決まっていなかったために、営業・事務・現場がバラバラに動いていました。
「場面」を1つ決めて、当てはめてみる
いきなり全業務を整理しようとすると、手が止まります。
おすすめは、いま一番もめている場面を1つだけ選び、そこに当てはめることです。
建築会社の例で言えば、「お客様から仕様変更の相談が来たとき」という場面です。
この1場面について、誰が・いつ・どこまで動くのかを決めます。
たとえば、こう決めます。
- 受ける人:最初に相談を受けた営業が、必ず一次窓口になる
- 決める人:金額や工期に影響する変更は、現場責任者が可否を判断する
- 伝える範囲:変更の可能性が出た時点で、決定を待たずに事務と現場へ共有する
- 使う手段:口頭ではなく、共有シートに1行残す
ポイントは、4つ目の「決定を待たずに共有する」です。
冒頭の営業は「まだ決定ではなかったので伝えなかった」と答えていました。
この基準を「決定前でも、可能性の段階で共有する」と決めておけば、あの行き違いは起きなくなります。
NG例とOK例
同じ「共有」でも、設計があるかないかで、こう変わります。
- NG:「各自、早めに共有してください」
-
一見きちんとした指示に見えます。
ですが、「早めに」がいつなのか、「共有」が誰に対してなのかが、人によって違います。
結局、それぞれの基準で動いてしまい、また行き違いが起きます。 - OK:「仕様変更の可能性が出たら、その日のうちに、共有シートに1行書く」
-
いつ・何を・どこに、が決まっています。判断の余地がないので、誰がやっても同じ動きになります。
「早めに」「しっかり」「こまめに」といった言葉は、一見わかりやすいのですが、人によって解釈が変わる言葉です。
研修として設計するときは、この曖昧な言葉を、具体的な動作に置き換えることが大切です。
決めたことは、1枚にまとめる
最後に、決めた内容は口頭で終わらせず、1枚の紙かデータに残してください。
「この場面では、誰が・いつ・どこまで」が一目でわかる状態にしておくことが、定着の条件です。
紙に残っていれば、新しく入った人にも同じルールを渡せます。人が入れ替わっても、設計は残ります。
よくある質問
最後に、チームビルディングについてよく聞かれる質問に答えておきます。
Q. 何人くらいの会社から必要ですか?
人数ではなく、仕事の「つながり方」で決まります。
- 営業と事務が常にやり取りしている。
- 現場と管理部門で情報の受け渡しが多い。
- 案件ごとに複数の人が関わる。
このように、互いの仕事が依存し合っている場合は、10人以下の会社でも必要です。
冒頭の建築会社も、規模の問題ではありませんでした。
営業・事務・現場が1つの案件に関わるからこそ、「誰が・いつ・どこまで」の設計が要る。
逆に、業務がほぼ1人で完結する会社なら、人数が多くても優先度は下がります。
Q. 1日の研修で変わりますか?
単発の研修だけで行動が定着するのは、かなり難しいと思います。
研修で、たしかに気づきは生まれます。
ですが、
- 会議のルールが変わらない
- 役割の定義があいまいなまま
- 決め方も以前と同じ
この状態では、数週間で元に戻ることがほとんどです。
冒頭の建築会社が、報連相の研修をしても戻ってしまったのと同じです。
気づきを行動として残すには、研修で終わらせず、日々の仕事の進め方に落とし込むことが必要です。
Q. オンラインでも実施できますか?
オンラインでも実施できます。
ただし、対面と違って、雑談や場の空気が生まれにくくなります。
だからこそ、発言の順番を決める、チャットの使い方を決めるなど、話し方のルールをより丁寧に設計することが必要です。
対面以上に「仕組み」で補う意識を持つと、オンラインでも十分に機能します。
まとめ|イベントではなく「設計」を変える
チームビルディングは、やれば必ず良くなるものでも、すべての会社がやらなければいけないものでもありません。
判断の基準はシンプルです。
営業・事務・現場のように、互いの仕事が依存し合っていて、そこで連携ミスや行き違いが起きているかどうか。
もし、
- 報告が遅れる
- 責任があいまい
- 部門間で押し付け合いが起きる
- 新人が孤立する
こうした症状が出ているなら、原因は人ではなく、仕事の進め方が決まっていないことにあります。
冒頭の建築会社を思い出してください。
事務も営業も現場も、サボっていたわけではありませんでした。
ただ、「仕様変更が来たとき、誰が・いつ・どこまで動くのか」が決まっていなかった。
だから、それぞれが自分の基準で動き、行き違いが繰り返されました。
必要なのは、仲良くなることではありません。
- 誰が決めるのか。
- 誰が責任を持つのか。
- どこまで報告するのか。
この「仕事が回る仕組み」を整えることです。
イベントをやっても、空気は一時的にしか変わりません。
ですが、設計が変われば、空気も成果も変わります。
チームビルディングをやるかどうかではなく、チームの進め方を見直すかどうか。その判断が、組織のこれからを左右します。
研修や連携の悩み、一度整理してみませんか


この記事の冒頭で紹介したような相談を、実際にお受けしています。
「報連相の研修をしても、しばらくすると元に戻る」
「早く共有してほしいのに、人によって言うことが違う」
「これ以上、研修で何を伝えればいいのか分からない」
こうした悩みの多くは、伝え方の問題ではなく、「誰が・いつ・どこまで動くのか」が決まっていないことから起きています。
ただ、渦中にいると、どこに空白があるのかは意外と見えにくいものです。
まずは、いまの状況を言葉にして整理するところからで大丈夫です。
何をどう変えるかが決まっていなくても、問題ありません。
「うちの連携、どこから手をつければいいんだろう」
そう感じたときが、見直しを始めるタイミングです。お気軽にご相談ください。
形式
オンライン
所要時間
30分
費用
無料
まだ具体的に決まっていなくても構いません。
「うちの場合はどうだろう」から、ご相談ください。


















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